更新日:2020.11.8/公開日:2017.3.1
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
顔・頸部(くび)・おなかの多発したイボ
多発したイボの特徴
イボ(いぼ、疣贅)はウイルス性疾患で感染性のものです。
治療せずに放置しておくと、ウイルスが周囲に感染していき、どんどん数が増えていきます。
また、イボに他人の皮膚が頻繁に触れたり、こすれたりすると、その部位にイボが感染して増えます。
顔、頸部、胸部(とくにブラジャーでこすれる部分)、腹部、腋窩(ワキ)など機械的な刺激や摩擦が多い部位で増える傾向があります。
知らないうちに数が増えていくイボは、クリニック受診時に100個以上になっていることもよくあります。
数が増えてくると、ネズミ算式に増えていくので、どんどん目立つようになってきます。

顔の多発したイボ 右下はレーザーテスト照射部位

頸部に多発したイボ(約300個)

へそ周囲のイボ
多発したイボの治療
1)液体窒素による冷凍凝固治療
イボ治療は液体窒素による冷凍凝固と電気治療器による熱焼却が健康保険適用となっています。
液体窒素による冷凍凝固は一般に広く行われており、細い綿棒を液体窒素に浸してイボを冷凍凝固させて炎症を起こし脱落させる治療です。
顔、頸部、胸部などのやわらかい皮膚では強い炎症がおこり1~2回の治療でイボは脱落しますが、ほとんどの場合は炎症後の色素沈着がおこりシミとなって残ります。
色素沈着が消えるまで約1年、長い人は3年以上かかることがあります。
色素沈着はいずれ消えるので、数が少ない場合、服に隠れる部位で人に見せない部分ではお勧めの標準治療です。

液体窒素治療による炎症後色素沈着
顔面や頸部に多数存在する場合は長く続く色素沈着は外見上問題となります。
また、身体に多発する場合、冷凍凝固治療後に多数の色素沈着が残ると、水着が着れない、温泉でひと目が気になるといった不便さがあります。
色素沈着が強く起こった場合はハイドロキノンという美白剤を外用してシミを薄くしますが、顔、頸部以外に部位ではなかなか消えないのが困りものです。

冷凍凝固治療後の色素沈着(右側腹部)(他院での治療後2年経過)
2)ハサミでの切除
皮膚に麻酔クリームを外用して、イボを1つ1つハサミで切る方法があります。
この方法は高周波メスやレーザーなどがなくても治療できるので便利な方法です。
マイナス面もあります。盛り上がりが少ないイボ、平坦なイボ、小さくてハサミの刃がかからないイボは治療できないこととです。
さらに、治療の手技、イボの大きさによっては、治療後に白く盛り上がった傷痕(瘢痕)が残る場合があります。。
治療した数十個がすべて同じように盛り上がった瘢痕になるので、かえって目立つようになります。
起こりやすい部位は腹部、胸部、背部です。腹部は特に起こりやすい部位です。

イボをハサミで切って治療したあとの瘢痕 赤い矢印が瘢痕。 治療部すべてが白く盛り上がっている。
上の写真は他院で腹部のイボをハサミで切って治療され、傷痕がすべて白く盛り上がった方状態です。
いったんこのような瘢痕ができると、治療ができないので注意する必要があります。
3)炭酸ガスレーザーによる治療
山手皮フ科クリニックでは、スキャナ付炭酸ガスレーザー・コア(シネロン・キャンデラ社製、日本国内承認機器)でイボを治療しています。
従来型の炭酸ガスレーザーとの違いは、治療スピードの速さと治療後の傷のきれいさです。
レーザーの特徴はスキャナ付フラクショナルレーザー・コアをご覧ください。
炭酸ガスレーザー性能比較
スキャナ付炭酸ガスレーザー | 従来型炭酸ガスレーザー | |
治療スピード | 最大で1秒間に4個のイボを治療可能 | イボ1個につき3~5秒 |
1時間での治療可能数 | 1,500~2,000個 | 300個程度 |
傷の治り | 顔面頸部7日、身体で10日 | 10日前後 |
炎症後色素沈着 | 少ない・消えるまでの期間が短い | 冷凍凝固より軽度 |
瘢痕 | 瘢痕が残ることは極めて少ない。 1000人に1~2名程度(当院症例) |
瘢痕が残ることがある。 |
治療精度 |
コンピュータ制御でカンナのように平坦に蒸散 (すべて均一に浅い傷となる) |
手元で調整しするので蒸散にムラがでる (手元の加減で傷が深くなることがある) |
スキャナ付炭酸ガスレーザー・コアがなぜイボ治療に適しているか
当院でも、3年前まで従来型炭酸ガスレーザーを使用してイボの治療をおこなっていました。
1個あたり3~5秒かかりました。イボの部位を探す時間を含めると300個のイボ治療で1時間ほどかかっていました。
イボ治療で大切なことは、すべてのイボを取ることです。すくなくとも拡大ルーペを使って肉眼で確認できるすべてのイボを治療したほうが良いです。
小さいイボを見落とすと再び増えて1年から数年でもとにもどってしまいます。
しかし、イボが1000個ある場合どうなるか。治療は3時間半から4時間かかってしまいます。
これではほかの診療をおこなうことができなくなります。
実際、山手皮フ科クリニックにいらっしゃる方はほかのクリニックを受診されて、レーザー治療を受けてこられた方もいらっしゃり、その時の数を聞くと「50個とった。」ということなのですが、イボはそのときすでに300個くらい確認できます。
おそらく50個とった部分は、周囲からあたらしくできたイボで埋められてしまったでしょう。
これだと、治療する意味があったのかということになります。
スキャナ付炭酸ガスレーザー・コアはコンピューター制御のスキャナ付レーザーで、正確に平坦にけずれ、治療スピードが格段に速いのが特徴です。
1時間でイボ1500個以上の数を治療でき、治療範囲のイボを拡大鏡をつかって眼に見えるイボをすべて治療することが可能になりました。
美容外科で従来型のレーザーでイボの治療をされると、1個\1,000~\3,000かかるそうです。
実際、治療に手間がかかりますから妥当な価格だと思います。でも300個治療すると、かなりの価格になります。
1000個以上となる単純計算で100~300万円になります。
このように高額だと、目立つイボのみを治療することになるのでしょう。
しかし、イボが残っていると、いずれ元通りのイボが多い皮膚になってしまいます。
当院では、イボをできるだけ多く安く治療できるように、スキャナ付炭酸ガスレーザーを購入しました。
スキャナ付炭酸ガスレーザーは、最速1秒に4回のレーザー照射ができます。
治療のスピードが速いので、治療価格を1個あたり\330に設定しています。
希望される範囲すべてのイボを治療できると思います。
現在、クリニックには二機のスキャナ付炭酸ガスレーザーがあります。
治療用とテスト照射用です。テスト照射用を診察室に常備することで、初回診察に引き続きその場でテスト照射が可能です。
以前は初回診察後、テスト照射が必要な場合、治療室が空くまで待っていただいていました。長い時間お待たせすることもあり、お叱りをいただいていました。
テスト照射用スキャナ付炭酸ガスレーザーを2019年11月より運用しています。
スキャナ付炭酸ガスレーザーによるイボ治療例

多発しているイボ(右頸部、仰臥位)

拡大鏡を使って、小さなイボも治療しています。

レーザー照射直後(頸部正面) 傷は5日程度でなおります。

レーザー照射後3ヵ月後です。すべてのイボは消えて、炎症後の色素沈着はありません。
【上記症例の詳細】頸部のイボをすべて取る目的で受診。イボの個数は約300個。治療費用:見積もり料金\3,300、治療費 \330円×250個で\82,500、麻酔クリーム \3,300、総治療費 \89,100, 治療のリスク:治療後の炎症後沈着、瘢痕
レーザー治療のながれ
※液体窒素によるイボ冷凍凝固治療は保険適用です。予約なしで受診ください。受診に引き続き治療をいたします。
①初診(保険診療・予約なし)+テスト照射⇒②数の計測とお見積り(後日・予約制)⇒③治療(後日・予約制) 3回のご来院が必要となります。
初診
初回のご相談は予約不要です。保険証を持参の上、院長の受付時間にご来院ください。
院長の診察の受付は月・火・木・金は10:00~12:00、15:00~18:00、土は9:00~11:00です。
初診時にはイボの数、分布を拝見し、治療希望の範囲を確認し治療の説明をおこないます。
レーザー治療の説明をPC上でスライド使い説明いたします。
テスト照射
治療経過を確認されたい方は、治療範囲のイボを5個程度を炭酸ガスレーザーで治療します。
テスト照射は保険適用(イボ焼却術)です。
テスト照射の目的は傷の治り具合(照射→かさぶた→紅斑→治癒)の過程を小さな範囲で体験いただくことです。
「ハサミでの切除」の写真でお見せしたような瘢痕が非常の稀におこります。
スキャナ付炭酸ガスレーザーを導入して4例おこっています(現在治療数3000例以上 2020年7月現在)。ともに腹部の治療です。
胸部、腹部、背部の治療をご希望の方はかならずテスト照射が必要です。
※スキャナ付炭酸ガスレーザーによるイボ治療は皮膚のきわめて浅い部分を均一に蒸散させるので、通常の炭酸ガスレーザーに比べると、肥厚性瘢痕/ケロイドができる可能性は極めて低いといえます。

テスト照射部にマーキングします。

テスト照射ではアイスパックで40秒冷却します。

炭酸ガスレーザーでイボを蒸散しています。

テスト照射後です。
数の計測と費用のお見積り(要予約)
拡大鏡を使いイボの数1個1個を数えてお見積りをします。見積もりをおこなわずに治療はいたしません。見積もり料金は\3,300です。
※イボ治療では治療範囲のイボを残さないことが大切です。当院のイボのレーザー治療では患者様のご希望の個数のみ、上限金額の指定での治療は承っておりません。治療希望の範囲にある全てのイボをカウントいたします。
レーザー治療(要予約)
予約をお取りいただき、後日の治療となります。
痛み対策
レーザー照射時の痛みをなくすために、麻酔薬含有クリームを使用します。
麻酔時間は40~60分です。
治療では眼瞼のイボも治療します。眼瞼縁(まぶたの縁のぎりぎりの部分)も治療可能です。
眼瞼縁にはクリームが塗れません。麻酔薬含有クリームが目に入り角膜に付くと炎症を起こすからです。
眼瞼にイボが多発している場合は、麻酔の注射を用い神経ブロックをします。

治療前に麻酔クリームを塗布します。

麻酔クリーム塗布後はラップで皮膚をおおって、1時間ほど待ちます。

頸部(顎下から鎖骨まで)の麻酔をしているところです。

背部のイボの治療中の写真
レーザー照射
イボを治療する際には拡大鏡を使用して、裸眼では見えない小さいイボまで治療します。
小さいイボが取り残されていると、数ヶ月~数年かけて増殖して、結局もとの状態に戻ります。

拡大鏡を使用して確認できるイボを1つ1つ治療していきます。

右側腹部に多発するイボ(レーザー照射前)

右側腹部のイボレーザー治療直後
拡大鏡を使って見えるイボをほぼすべて治療します。
直径2-3mm以上あるイボはクリーム麻酔のみでは痛みがあるので、麻酔注射剤を使います。
上の写真でイボの周囲が蒼白になっているところは、麻酔の注射をしたところです。
炎症後色素沈着
レーザー治療後から創部が上皮化して傷が治るまで顔、頸部で7日、腹・胸・背部は10日程度かかります。
上皮化すると治療部位はいったんピンク色の新しい皮膚になっています。
その後ですが、腹部、背部では100%、頸部、胸部では50%ほどの方は一過性の炎症後の色素沈着がおこります。
顔では炎症後色素沈着が起こることは稀ですが、イボが大きかった部位、生まれつき肌の色が濃い、日焼けしている方は起こりやすい傾向があります。
お湯で火傷を負ったことがある方は、火傷のあとが茶色の皮膚になり、その後消えていったことと思います。同じ原理で起こるものです。
色素沈着は通常は上皮化後1~3週ではじまり、色の濃さのピークは1~1.5ヶ月ごろです。
その後、徐々に色が薄くなり、頸部は3ヶ月以内に消失します。
腹部は消失するのに通常3~6ヶ月かかります。
腹部は炎症後色素沈着が残りやすく長い人で1~1.5年でかかって消失することがあります。
一般に顔からの距離が遠くなるにつれて、炎症後色素沈着が消えるまでの時間は長くなります。
顔<頸部<胸部<腹部・背部の順となります。

頸部の炎症後色素沈着(照射1ヵ月後)

腹部の炎症後色素沈着 (照射1か月後)
当院では炎症後色素沈着を想定して、治療直後からトラネキサム酸の内服(250mg錠/回を1日朝夕2回)をおすすめしています。
顔以外に部位で美白剤を外用することはおすすめしません。胸や腹部、背中に美白剤を使用する場合、大量が必要で費用対効果が薄いと考えます。
炎症後色素沈着は一過性で消えない人は当院ではいまだいらっしゃいません。

イボのレーザー治療後の色素沈着の経過
費用
イボ冷凍凝固法(保険適応)
保険点数 | 自己負担額(30%の場合) | |
初診料 | 282点 | \846 |
再診料 | 72点 | \216 |
いぼ冷凍凝固法(3ヶ所以下) |
210点 | \630 |
いぼ冷凍凝固法(4ヶ所以上) |
260点 | \780 |
スキャナ付炭酸ガスレーザーによるイボ治療
1個 |
\330(消費税含む)※ (下の青字の部分をかならずお読みください。) |
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※1個\330は顔、頸部、デコルテ、胸部、腹部、上背部、下背部、そけい部といった1つの区分に存在するすべてのイボを治療するときの費用になります。
個数指定、金額指定での治療はおこなっていませんので、あらかじめご了承ください。
スキャナ付炭酸ガスレーザーによるイボ治療のご質問はよくある質問の「治療項目別」の「スキャナ付炭酸ガスレーザーによる多発したイボ治療」をご覧ください。
スキャナ付炭酸ガスレーザーによるイボ治療の概要
診療区分 | 自由診療 | ||||||||||||||
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照射出力等 | 0.5~4J/c㎡ | ||||||||||||||
治療期間及び回数 |
1回で終了 | ||||||||||||||
施術によるリスク・副作用 | 治療直後にはレーザー照射部位に発赤と軽い痛みがでます。 治療後は一過性の炎症後色素沈着が起こります。 まれに治療部位が盛り上がって治癒することがあります(肥厚性瘢痕)。 胸・腹部・背部の治療を希望される方はテスト照射が必要です。 |
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施術に要する費用 |
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承認区分 | スキャナ付炭酸ガスレーザー・コアは国内承認機器です。 |
注)治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
治療に用いる医薬品および機器は当院の医師の判断の元、個人輸入の続きをおこなったものです。
個人輸入において注意すべき医薬品等についてはこちらをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html