更新日:2024.5.29/公開日2021.6.28
こちらのコンテンツは、院長の豊福一朋が自身のこれまでの研究ならびに経験、関連書籍、学術報告などをもとに独自に作成したものです。将来において当院における治療方法、治療後の処置、使用機器、治療の流れなどについて内容が変更となる可能性があります。院長の経歴はこちらをご覧ください。
1.顔たるみの実態とは?衰えたハリと弾力の科学
30代を過ぎると、鏡を見たときに「最近、顔がたるんできたなぁ」と思われる方も多いのではないでしょうか。
顔のたるみは実際の年齢よりも老けた印象にしてしまいます。
年齢を重ねるにつれて気になってくる顔のたるみには様々な原因があります。改善するためには顔がたるむ理由を知ることが大切です。
このページでは、顔がたるむ原因について詳しく説明し、各原因に対応した治療法、加えて当院でおこなっているダイヤモンドチップとHIFU(ハイフ)を組み合わせた治療法などを紹介します。
また、自分でも可能な改善のポイントもご紹介します。
顔のたるみについて知り、早めの対策や治療をおこなってください。
顔のたるみとは何か
顔面の表面は外側から表皮、真皮、皮下組織(脂肪組織)、SAMAと支持靭帯、筋肉、骨の組織が層状になっています。
たるみの原因がこれらの組織のどれか1つに原因があるのではありません。それぞれの組織の老化が同時に組み合わさっているものです。
「同時多発〇〇」という表現がぴったりです。
![顔の組織の模式図](/wp-content/uploads/images/aaf11bf3ac3f62dd497d4178f18538ba.png)
顔の組織の模式図. 顔の皮膚の組織は外側から表皮(厚さ約0.06~0.2㎜)、真皮(厚さ約2㎜)、SAMS、結合組織、骨の順番になっている。骨の表面(骨膜)からは支持靭帯が真皮まで樹木状の伸びていて、表皮、脂肪組織をしっかりと顔の骨格に繋ぎとめている。
それぞれの皮膚の組織が顔のたるみのどのように関わっているか
真皮
厚さ約2㎜の真皮にはコラーゲン、エラスチン(弾性線維)、ヒアルロン酸などの基質※があり、皮膚のハリと弾力性を担っています。
加齢や紫外線、喫煙はコラーゲン、エラスチン、基質の変性や劣化の原因となります。
変性劣化がおこると真皮は最初のシワとなってあらわれます。
さらには脂肪の重みと真皮自身の重さを支えきれなくなり、皮膚がたるみます。
※コラーゲン、エラスチン(弾性線維)、ヒアルロン酸などの基質をまとめて細胞外マトリクスといいます。
変性劣化した細胞外マトリクスは色々な方法で再生することができます。美容医療の最近のトピックです。
脂肪組織(皮下組織)
真皮の下(皮下組織)は脂肪組織です。脂肪組織は顔の輪郭形成に重要な役割を果たしています。
ほどよい程度の脂肪組織は我々の若い時の顔はふっくらさせ、たまご型をつくります。
脂肪組織は表層脂肪と深層脂肪に分かれます。深部脂肪は加齢に伴い減少していきます。
表層脂肪の加齢変化は体重の増減も影響し、個人差が大きく出ます。
表層脂肪では、加齢とともに額やこめかみといった上顔面、顔面の外側の脂肪が萎縮して容量が減ります。
一方、顔の内側では、脂肪の萎縮による容量の減少は少なく、むしろ脂肪が沈着して容量が増します。そして、内側の脂肪は自身の重みで下垂します。
上顔面、顔の外側の表層脂肪の減少と内側の表層脂肪の増加と下垂で、おにぎり型、ブルドック型のたるみ顔になります。
![顔面の表層脂肪の分布図](/wp-content/uploads/images/a5b5abb90440929597a0397b55cd1e01.jpg)
顔面の表層脂肪の分布図. 加齢により顔の上部(額やこめかみ)、外側の脂肪分角は容量が減る。内側では脂肪の減少は少なく、むしろ脂肪が沈着し増える傾向にあり、脂肪自体の重みで脂肪が下垂してたるみを増す。
SAMS(スマス)
顔では脂肪組織の下にSMASがあります。SMASは薄い膜でできている表在性筋膜のことです。Superficial MusculoAponeurotic Systemの略で「スマス」と読みます。
スマスは真皮と脂肪組織をしっかり深部の筋肉や骨に固定し、皮膚を支える土台とした働きがあります。
スマスの主な成分はコラーゲンです。加齢によりコラーゲン量が減少すると、脂肪組織と真皮の重さを支えきれずに下方に弛緩します。
美容医療での顔のたるみ治療、フェイスリフトはいかにスマスにアプローチするかが治療効果の優劣と関係します。
![SMASの位置](/wp-content/uploads/images/SMAS.jpg)
SMASは顔の表在性筋膜でおもに横顔の部分(耳の前あたりから頬の下部にかけて)に存在します。上は小頬骨筋、下は広頚筋、内側の境は口輪筋です。脂肪組織と表情筋の筋肉の層の間に存在している膜で内側ほど薄くなっています。
支持靭帯(リガメント)
支持靭帯は骨膜から真皮まで皮膚を貫通する樹木のような形をしています。
顔の骨、SAMSと真皮、脂肪組織を結びつける組織で強力な線維でできています。
支持靭帯が脂肪と真皮を顔に固定して、構造的なきれいさを保っています。
支持靭帯もSMAS同様コラーゲンでできていて、加齢でコラーゲン量が減り支持力が弱まると、真皮、脂肪組織が重力に逆らえずに下垂するといわれています。
しかし、支持靭帯の弾力性は加齢によっても比較的保たれ、支持靭帯が付着する骨が萎縮、吸収されることでの位置変化、皮膚と脂肪組織のゆるみの方がたるみに影響するという意見もあります。
![支持靭帯と脂肪分画](/wp-content/uploads/images/353a259def4368343c1049222aa3474b.png)
支持靭帯と脂肪分画. 支持靭帯は骨から伸びてSAMSを貫通して樹木を枝を張るように脂肪組織の中を伸びて真皮に付着します。脂肪組織の中を伸びた支持靭帯は脂肪の隔壁となり、分画という脂肪の区画をつくります。高周波が脂肪を通過する際には、隔壁を加熱させて収縮させるので脂肪が引き締まります。
骨
骨は顔の輪郭の土台となる部分です。骨の形で顔の輪郭がつくられます。
骨は一見変化していないようですが、つねに骨の新生と吸収がおこっていてそのバランスが保たれています(骨の新生=骨の吸収)。
加齢がすすむと、骨新生より骨吸収が増え、骨量が相対的に減っていきます(骨の萎縮ともいいます)。骨の減少は顔の輪郭を変化させます。
さらに骨の減少加えて、脂肪組織の減少がおこるので、歳をとると顔はゴツゴツした印象になります。
顔のたるみに対する部位別アプローチ
顔のたるみ治療では、それぞれの組織に対する治療のアプローチが異なります。
ひとつの治療法ですべての組織に効く方法はありません。どの組織を優先して治療するかはたるみの状況を診て判断します。
顔のたるみは真皮、皮下脂肪、SAMS、支持靭帯、骨、どれか1か所のみに変化がおこっているのではなく、「同時多発」でおこっているので、治療方法は複数を組み合わせて治療することがあります。
一般には下の表のような治療をおこないます。
組織 | 原因 | 使用する機器 |
真皮 | 弾力性低下 | 超音波(HIFU)、高周波/ラジオ波(ニードルRF)、IPL、レーザー |
脂肪組織 | 減少、下垂(移動) | 超音波、スレッドリフト、脂肪溶解注射 |
支持靭帯 | 弛緩 | 超音波(HIFU)、ヒアルロン酸注入 |
SMAS | 弛緩 | 超音波(HIFU) |
骨 | 吸収 | ヒアルロン酸注入 |
たるみの3つの大きな原因
顔のたるみの原因は1)紫外線による光老化、2)加齢、3)生活習慣です。
1.紫外線による光老化
紫外線はおもに皮膚(なかでも真皮)の老化要因となります。顔の皮膚は1年中日光にさらされているので、紫外線による光老化は顔のたるみの大きな原因です。
紫外線は波長の長さでUVA、UVB、UVCの3つに分かれます。このうち波長が最も短いUVCは地球のオゾン層で遮られて地表には届きません。UVA、UVBが地表に届きます。
UVA、UVBの2つのうち、波長が短いUVBは皮膚の表皮層まで届きますが、より深い真皮までは届きません。老化より皮膚がんの発生に関係しています。
波長が長い方のUVAは、真皮深層にまで到達します。
真皮にはコラーゲンやエラスチン(弾性線維)、基質といった細胞外マトリクスという物質が存在して皮膚の弾力性の維持に重要な役割をはたしています。
UVAは真皮で有害な活性酸素をつくりだし、細胞外マトリクス減少や変性劣化を招きます。さらに、細胞外マトリクスを産生する線維芽細胞にダメージを与えます。
ブルーライトによる老化
最近、モニターからでるブルーライトが真皮の細胞外マトリクスの変性劣化をおこす可能性があると言われています。
実際にブルーライトが真皮を老化させて肝斑の原因になりうるといわれています。
ブルーライトは屋内でもモニターを見る業務中は常に顔がさらされます。ブルーライトは紫外線より波長が長く、UVAより深い真皮にまで達するので注意する必要があります。
2.加齢によるたるみ
加齢による顔のたるみの原因は、1)骨の減少、2)SMASと支持靭帯のゆるみにより皮下脂肪の下垂、3)真皮の老化、4)表情筋の衰えの4つが主な原因といえます。
1)顔のたるみには骨の減少が関係している
顔のたるみに骨が関係していることは、意外なことではないでしょうか。
骨は顔のたるみに大きく関係します。骨は顔の輪郭をつくる土台のようなものです。
歴史番組などで発掘された頭蓋骨から縄文人や弥生人の顔、さらにおおよその年齢を再現することができるのは、頭蓋骨の形状で顔の輪郭が決まるからです。
加齢によりは骨は密度が減り、収縮します。これを骨吸収(骨萎縮)といいます。
骨吸収が顔の輪郭を変化させて、たるみに関係する部位は、主にこめかみ、目、ほほ、鼻、顎の5か所です。
![加齢により骨が変化する様子](/wp-content/uploads/images/1d541568bd64b98b30c818d3d547d89c.jpg)
加齢による骨吸収が輪郭におよぼす影響. ①側頭骨の吸収で若いときの逆三角形の顔はおにぎり型にかわり、顔が大きく見えるようになる。②眼窩が広くなり、眼が落ちくぼむ。③ほお骨、上顎骨の吸収は頬部が平坦、さらには凹んで顔が平面になる。④梨状孔の拡大で鼻が横に広がる。⑤下顎骨の吸収は顎が短くなり、マリオネットラインをつくり、さらにおにぎり型の顔になる。
①側頭骨(こめかみ)
側頭骨が吸収されると、こめかみが凹みます。個人差がありますが40歳ころからこめかみの凹みが目立つようになります。
こめかみを触ってみてください。若い時のゆるやかな卵型の輪郭がなくなって、凹んできていませんか?
こめかみが凹むと上顔面のボリュームが減り、相対的に下顔面が大きく見えるようになります。若いときは逆三角形の顔が、年を取って三角形、”おにぎり”型に近くなるのはこのためです。
こめかみの凹みだけで”おにぎり”型の顔にはなりませんが、「同時多発」的に下顔面の変化(頬部の下垂など)をともない、”おにぎり”型に変化します。
![加齢による顏変化](/wp-content/uploads/images/0e62b03ca6a0d25b9358ca81660b6d9c.png)
加齢による顏変化 若いときは逆三角形の顔が、年を取って三角形、”おにぎり”型になる傾向にあります。頬部のたるみが加わるとブルドッグ型のたるみになります。
②眼窩(がんか)
眼窩は眼球が収納されている骨が陥凹したくぼみです。この凹みは加齢で広がっていきます。結果、眼が落ちくぼみ、クマができます。
③ほお骨、上顎骨
ほお骨(上顎骨)の骨吸収により、骨がほおの内側に落ち込んでいきます。その際に支持靭帯、脂肪組織、真皮が引き込まれていきます。頬部はへこみ、顔が平坦になります。
④梨状孔
梨状孔は鼻に一致した頭蓋骨に空いた穴です。骨吸収で梨状孔は拡大し、鼻は横に広がります。若いときは幅が狭くツンと上を向いた鼻が、年を取ると横に広がって見えるようになります。
⑤下顎骨
下顎骨(顎の骨)は吸収されて後ろに下がります。顎がしゃくれます。
また、縦方向にも短くなります。
実際は骨の吸収に加えて、顎の筋肉(オトガイ筋)も収縮するようになり、梅干しジワをつくると同時にさらに顎の皮膚を奥に引っ張りこみます。
顎が短縮するときに、頬の下部は位置が取り残されてだぶつくようになります。さらに加齢により表層脂肪のなかで顏の内側の部分は脂肪が沈着して下垂します。
これらがマリオネットラインができる理由です。
![下顎骨(顎の骨)の吸収でマリオネットラインができる図](/wp-content/uploads/images/69123b50b998d1820838a13ac943533d.png)
下顎骨(顎の骨)の吸収でマリオネットラインができるメカニズム. 顎の骨が吸収されると顎が短くなる。ほほの下の部分が骨の短縮に取り残されだぶつく。顔面内側の表層脂肪は加齢で脂肪が沈着して容量が増えて重くなり、さらに頬部は下垂してだぶつく。さらにはオトガイ筋の短縮も加わるとさらに顎は短くなり、マリオネットラインが目立つようになる。
2)表層脂肪、真皮の変化、SMASと支持靭帯の弛みがおこり顔がたるむ
加齢により表層脂肪は顏の上部、外側は薄くなりますが、顔の中部、下部では脂肪が沈着して重くなります。
また、脂肪を外側から抑え込んでいる皮膚の真皮が変性劣化により弾力性を失い、脂肪組織の位置を保てなくなります。
SMASは真皮、脂肪組織の位置を保って、顔の輪郭形成を担っていますが、加齢により主な成分であるコラーゲンが減少して弛みます。
表層脂肪沈着と下垂、真皮の弾力性の低下、SMASの弛みにより、顔の皮膚と脂肪組織は重力に逆らえずに、支持靭帯とともに下垂していきます。
結果、顔の輪郭は変化して、フェイスラインがこわれてブルドッグ型のたるみがおこります。
![皮膚がたるむメカニズムの解説](/wp-content/uploads/images/095e846468b553bc1199ea283505b5a1-800x402.png)
皮膚がたるむメカニズム
![支持靭帯の加齢変化](/wp-content/uploads/images/31d6599229f1c2d197f872b4237279ae.png)
支持靭帯の加齢変化. 支持靭帯は顔の骨や筋肉と皮膚を結びつける強力な線維でできた樹木のような組織です。幹の部分が骨(骨膜)に付着して、皮膚の上層に行くに従い枝を伸ばしたように広がり、重力に対抗して皮膚と脂肪組織を支えます。支持靭帯が付着する骨吸収による位置の変化、皮下と皮下脂肪のゆるみと重力による下垂により、支持靭帯は皮膚と脂肪組織を支えることができなくなり、顔はたるみます。
3)真皮の劣化は皮膚のハリや弾力性の低下につながる
真皮層は厚さ約0.06~0.2㎜という非常に薄い角層の下にある、厚さ2㎜程度の組織です。真皮は弾力性とハリを保って、その下にある脂肪組織の位置を支えています。
顔の輪郭の保持に重要な役割はたします。真皮の老化の原因はコラーゲン、エラスチンの変性劣化、基質の減少です。
コラーゲンとエラスチンは皮膚の張力や弾力性を保っている成分です。コラーゲンとエラスチンの走る隙間をヒアルロン酸などの基質が埋めています。
コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質を細胞外マトリクスと呼びます。
細胞外マトリクスが劣化する最大の原因は加齢と紫外線による光老化です。タバコ・睡眠不足などで発生する酸化ストレスなどでも細胞外マトリクスは変性劣化していきます。
細胞外マトリクスの劣化の結果、真皮の弾力やハリが失われていくと最初にシワとなった現れます。さらに進むと真皮自身と脂肪組織の重みを支えきれなくなり、顔の皮膚はたるみます。
![皮膚のハリや弾力性の低下のメカニズム](/wp-content/uploads/images/7f8a9fa3abbe4f3f8737590a06fb18a0-800x660.png)
皮膚のハリや弾力性の低下のメカニズム. 紫外線や加齢により真皮のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質(細胞外マトリクス)は変性劣化します。これが皮膚の弾力性の低下となります。最初はシワとなって現れます。※図は説明ために表皮が厚く描かれています。実際に表皮は厚さ約0.2㎜、真皮は約2㎜で真皮は表皮の10倍の厚さです。
4)表情筋を鍛えてたるみ防止を
日常生活で使われている顔の表情筋は30%ほどらしいです。意識して動かすことで加齢により筋肉量の減少、筋力の低下を予防でき、これが顔のたるみ対策になります。
表情筋トレーニングは私の専門外なので詳細は専門家に任せますが、以下のようなことに気を付けるそうです。
- まず鏡を見て顔の色々な筋肉を動かし、どこが使えていないかを確認する。
- 左右差はないか、弱い筋肉はないかもチェックする。
- 顔全体をバランスよく左右均等鍛える。
トレーニングで鍛えるだけでなく、マッサージでほぐして肌を柔らかく保つことも、シワやたるみの予防につながるそうです。
3.生活習慣
日常の姿勢、食生活、喫煙が影響します。詳細は次の「顔のたるみの起こりやすい生活習慣」をご覧ください。
たるみが起こりやすい顔の部分
顔面の輪郭は若い時はたまご型ですが、加齢により顔面の凹凸、たるみがでてきます。
下眼瞼では眼窩脂肪が前に出てきまて、目の下のふくらみ(アイバッグ)をつくります。
眼窩脂肪(アイバッグ)の下には支持靭帯のゆるみで溝ができます。内側を鼻瞼溝、外側の頬瞼溝と呼びます。
鼻瞼溝、頬瞼溝の下には皮膚のだぶつき(メーラーバッグ)が突出します。その下がいわゆるゴルゴラインです。
口の周囲では、内側の表層脂肪の増加と下垂でほうれい線が深く目出つようになり、あごではマリオネットラインができます。
下顎の骨の吸収とオトガイ筋の緊張で顎が引っ込み、短くなります。そして顎下に脂肪が沈着して二重あごになります。
![顔面の加齢による変化](/wp-content/uploads/images/5cd74d02e1994bb50b1998aea47b1a68.png)
顔面の加齢による変化
2.年齢別顔のたるみの特徴と予防
30代のたるみの傾向と対策
顔のたるみは30歳代から気になり始める人が多いようです。顔の表情筋の筋力低下、フェイスラインや顎下の脂肪増加、真皮のコラーゲンの減少、ホルモンバランスのくずれがたるみの原因になります。
表情筋の筋力低下
20歳代までは表情筋に十分な筋力があり、皮膚を持ち上げたままで顔の容貌、ラインを保っています。
30歳代になると加齢により表情筋の筋肉量が減少し、さらに筋力が減少します。
筋肉量減少と筋力の低下により皮膚と脂肪組織が重力によって下垂するとフェイスラインにくずれが出始めます。
脂肪の蓄積
30代になると基礎代謝量や活動量の低下がはじまります。
個人差がありますが、フェイスライン、顎下の脂肪が増える場合、たるみや二重顎になります。
エラスチンの減少
皮膚の真皮にはコラーゲン、エラスチン(弾性線維)、基質という細胞外マトリクスがあり、これが皮膚の弾力性や水分の保持力を生み出しています。
エラスチンはコラーゲンと共に柔軟性をもたせる働きを担っています。
皮膚でのエラスチン含有量は20歳代半ばをピークに減少していくので、30歳代は20歳代ほどの肌の弾力やハリを保つことが難しくなってきます。
![30歳以降の年齢と皮膚でのコラーゲン。エラスチン含有量の変化](/wp-content/uploads/images/850c7612116999490846136e772ab7fd-1.png)
30歳以降の年齢と皮膚でのコラーゲンとエラスチン含有量の変化. 20歳中ごろから皮膚の弾力性を保つエラスチンは急速に減少をはじます。一方コラーゲンは十分は量が皮膚内に保たれています。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れ: ホルモンの変化によってもたるみが引き起こされます。
女性ホルモンの一種である「エストロゲン」は、生殖器官の発育・維持や月経周期の調節といった働きのほか、肌の弾力やハリをキープする作用も併せ持っています。エストロゲンの分泌量は20代でピークとなり、30代・40代の性成熟期を経て、更年期に入る頃に急速に減少するという特徴があります。
30代のたるみ予防・対策方法
保湿と紫外線ケア: コラーゲンやエラスチンを保つために、保湿をしっかり行い、紫外線から肌を守りましょう。
表情筋ケア: 表情筋を意識的に動かして、ハリのある肌をキープしましょう。特に表情筋は日常的に使用されていない部分も多いと言われています。筋力低下によるたるみ(筋肉たるみ)をなるべく抑えるためには、日常的に意識して表情筋を動かす必要があるでしょう。
美容クリニックでのケア: 高周波や超音波などの施術で肌を引き締め、たるみを予防、改善する方法もあります
40代以降のたるみへの対応方法
40代の顔のたるみは、肌の老化が主な原因です。以下に40代の顔のたるみの原因と対策を紹介します。
コラーゲン、エラスチンの減少
20歳代中ごろから減少を始めたエラスチンは40歳代になると、さらなる減少がおこっていて、すでの若いことの皮膚の弾力性は失われています。
加えて、40歳代からはコラーゲンも減少しはじめます。いよいよ、肌の弾力やハリを保つことが困難になってきます。
![40歳以降の年齢と皮膚でのコラーゲン。エラスチン含有量の変化](/wp-content/uploads/images/bf8f2e1922d335e11076607785e7bcdb.png)
40歳以降の年齢と皮膚でのコラーゲンとエラスチン含有量の変化.20歳中ごろから減り始めたエラスチンは40歳代になると減少は落ち着きましたが、相当量が減ってしまいました。また、30歳代は十分にあったコラーゲンが減りはじめます。皮膚のハリ、弾力性の低下を強く実感するのが40歳代です。
顔周りの筋力の低下
顔の表情筋は加齢とともに衰え、皮膚や脂肪を支える力が低下します。無表情でいる時間が長いと表情筋が衰える可能性があるため、意識的に表情筋を動かすことが大切です。
対策: 表情筋を鍛えるトレーニングを取り入れましょう。
代謝の衰え
基礎代謝が低下し、エネルギーの消費量が減少すると余ったカロリーは脂肪になって蓄えられます。
脂肪は上顔面と外側の脂肪は減少しますが、内側の脂肪が沈着して下垂をはじめます。ブルドック型の顏のたるみ、二重あごになりはじめる年齢が40歳代です。
顔の骨の萎縮
40歳代になると、人によっては骨が吸収されて顔に変化が表れ始めます。
具体的にはこめかみが落ち込んで凹む、額の骨が痩せて眉毛が前に出てたように見えます。
頬骨(上顎骨)は確実に萎縮するので目の下に窪みができます。この部分の骨の吸収により支持靭帯が引きずられるように落ち込むのでさらに窪みが大きくなります。
![40歳代での骨の変化](/wp-content/uploads/images/b29e7e5b27da697e0fb28e1346698e8f.png)
40歳代での骨の変化. 額、頬部(上顎骨)の骨吸収により、こめかみの陥凹、目の下の窪みができます。眼球を入れる眼窩の骨の吸収で目が落ちくぼみます。梨状孔が拡大して鼻が横に広がります。
3.たるみが化粧品で改善が見込めない理由
化粧品はたるみの改善をうたった化粧品があります。化粧品は薬事法で角層までしか浸透しないことになっています。
しかし、実際は真皮までは成分が到達していると思います。
たとえば、ビタミンC誘導体は真皮まで到達してコラーゲンの産生を促進し、真皮の弾力性を回復します。
化粧品でも成分によっては真皮まで到達してたるみに対する効果を発揮しているのです。
しかし、たるみの改善には化粧品だけでは不十分です。
たるみは真皮、支持靭帯、SMAS、骨の変化が複合して起こります。「同時多発テロ」ならぬ「同時多発加齢変化」とも言えます。
化粧品の成分が真皮まで到達しても、その下の浸透するのは真皮までで支持靭帯、SMASまでは届きません。
4.顔たるみの起こりやすい生活習慣
日常の姿勢とたるみの関係
たるみの原因の1つは脂肪組織の下垂(位置の移動)です。
木の枝になったリンゴのように、脂肪組織は重力で下に落ちようとしています。それを落ちないように支えているのは真皮と支持靭帯です。
パソコンでの仕事などのデスクワークで下を向いて仕事をしている、スマートフォンで長時間画面を見ることが習慣になっているなど、顔が常に下を向くのはたるみの原因になります。
真皮と脂肪組織は重力で下方へ移動しようとしています。真皮は自身の弾力性で重力に対抗しつつ、脂肪組織の下垂も防いでいます。
支持靭帯は脂肪の組織の中に枝を張ったように入り込み、脂肪組織を支えて、重力で下垂しないようにしています。
しかし、下を向く姿勢が長く続くと、重力に負けて真皮や支持靭帯の弾力性が損なわれ、脂肪組織と真皮とともに皮膚は下垂します。
喫煙、偏った食事が組み合わさると、皮膚の老化が早まりたるみが加速する可能性があります。姿勢には気を付けましょう
食生活の影響
美肌に役立つ代表的な栄養素としては、肌や筋肉をつくるタンパク質と、肌をダメージと老化から守る抗酸化ビタミン(ビタミンA・E・C)があります。
意識的に摂取したいものの、これらの栄養素のみを摂ればよいという訳ではありません。
プロテインなどの栄養補助食品も活用しつつ、栄養バランスを大切にしましょう。
喫煙
喫煙はたるみを加速します。
喫煙は皮膚にいろいろな悪影響をおよぼします。以下のような作用があります。
- 活性酸素を発生. 喫煙で生じる煙は体内に大量の活性酸素をつくります。活性酸素は皮膚だけでなく全身の老化を促進します。
- コラーゲンの生成を抑制:その結果、真皮の弾力性を低下させる。
- ビタミンCを破壊. ビタミンCはコラーゲン生成に必須のビタミンです。ビタミンCが減ると真皮でのコラーゲン産生に支障をきたします。また、紫外線、喫煙、ストレスにより体内に発生する活性酸素を中和して無毒化します。
- 血管収縮作用による血行の悪化. 皮膚表面の毛細血管が収縮して栄養が行き渡らなくなり、老廃物も貯まるなど、悪影響を及ぼします。
- 女性ホルモンの代謝を阻害し分泌が低下;皮膚の生理機能に重要な役割を果たすエストロゲンが減ると真皮の線維芽細胞の機能を低下させて真皮のコラーゲン産生が低下します。
紫外線
紫外線の中で波長が長いUVAは真皮深層まで到達して、細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質)を変性劣化させます。
紫外線対策はたるみ対策で重要です。日焼け止め、日傘、帽子などで徹底的に紫外線を防ぎましょう。
紫外線は真皮で活性酸素を発生させて老化を促進します。ビタミンCやポリフェノールを含んだ食品を摂取することも対策になります。
5.美容皮膚科での最先端たるみ治療法
リフトアップ施術の種類と効果
ここで紹介するのは美容クリニックで顏のたるみ治療に用いられている治療方法です。
- 手術
- スレッドリフト
- ヒアルロン酸注入
- 高周波(RF)により治療(ニードルRF、ダイヤモンドチップ)
- 超音波によるHIFU
- IPL
- 脂肪溶解注射
- スキンケア/マッサージ
手術
ゆるんだ皮膚を切除して吊り上げる、SMASに切開を入れてたるみを改善する手術があります。
形成外科の専門領域です。
スレッドリフト(糸リフト)
スレッド(糸)がたるみに効く理由は3つです。
- 組織を引っ掛けるギザギザ(コグ)のついたスレッドが皮下に挿入されることで組織を引き上げる効果
- スレッドを皮下に挿入したときにおこる組織の傷を治す働き
- スレッドが溶けて吸収される際におこる組織の炎症反応
スレッドの良い点は1回で高い効果のフェイスリフトが得られることです。
スレッドは自然にからだに吸収されてなくなる材質の糸使われます。徐々に吸収され6か月から1年でなくなります。
スレッドにより脂肪と皮膚を引き上げる
皮下にスレッド(糸)を挿入し、下垂してたるみの原因になっている脂肪組織を上方向に引き上げます。
脂肪組織とともに皮膚が引きあがり、たるみを改善します。
スレッドによるタイトニング効果
スレッドを脂肪組織に入れると、脂肪が溶解されます。
また、脂肪組織の中の線維組織の増殖と萎縮効果により、脂肪組織の膨らみ(厚み)が減少します。
脂肪組織が薄くなることで、たるんだ皮膚が内側に引き込まれ、タイトニング効果が発揮されます。
![スレッドリフトの入れ方](/wp-content/uploads/images/9d1d1d39ac2e164403d007cd8e2ff951.jpg)
スレッドリフトはほうれい線、マリオネットラインからこめかみの方向へギザギザ(コグ)のついた可溶性のスレッド(糸)を通します。スレッドは脂肪を貫通して下垂して脂肪を持ち上げ、若いころの位置に近づけます。糸を入れる方向は逆の方向を用いることもあります。糸を入れる方向は治療する医師の好みで、優劣はないとされています。
スレッドリフトの詳細はこちらをご覧ください。
ヒアルロン酸注入
ヒアルロン酸注入はたるみ治療においてポピュラーな施術の一つです。
骨が吸収されたことによりたるみを改善できるのはヒアルロン酸注入だけです。
こめかみ、眼窩縁、頬骨(上顎骨)、鼻孔、下顎(あごの骨)の直上に注入して、減少した骨を補い、顔の土台を整えます。
また、支持靭帯を持ち上げる、減少した脂肪組織に注入してボリュームを補うこともできます。
注入する製剤、量を変えることで、微妙な顔の凹凸、フェイスラインも修正できます。
治療効果は施術する術者の技量が左右します。
ヒアルロン酸注入の詳細はこちらをご覧ください。
高周波(RF)による治療(ニードルRF、ダイヤモンドチップ)
ニードルRF
ニードルRFはマイクロニードルという微細な針を皮下へ穿刺し、針先から高周波(RF)を照射することで、表皮に熱損傷を起こすことなく皮下と真皮層に直接熱エネルギーを与えます。
ダーマペンと高周波(RF)治療の双方を兼ね備えた治療器となります。ポテンツァ、シルファームといった機器が知られています。
真皮の細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、基質)の減少、変性劣化が真皮の弾力性やハリを減少させて顔のたるみの原因になる、と繰り返し説明してきました。
高周波(RF)は真皮に熱傷をつくります。熱傷は強いとやけどになり、弱いと皮膚の変化がおこりません。「修復可能な微細な熱傷」というさじ加減が大事です。
高周波(RF)はうまく、「修復可能な微細な熱傷」をつくれます。真皮の熱傷でタンパク質でできた細胞外マトリクスの一部分が変性凝固します。
からだは、この変性凝固した細胞外マトリクスを取り除き、新しい細胞外マトリクスを産生します。同時に細胞外マトリクスを産生する線維芽細胞も増やします。
コラーゲンが熱で収縮しておこるタイトニングが即効性効果です。新しい細胞外マトリクスを産生した弾力性の回復が長期的な効果となります。
![ニードルRFの治療メカニズム](/wp-content/uploads/images/9b0e4af90c565ce31616d5f8f333ea70.png)
ニードルRFの治療メカニズム. ニードルRFの最大の利点は皮膚の真皮層に高周波(RF)での熱凝固と穿刺ができることです。穿刺による傷に加えて熱凝固を真皮に与えることで、”最大限”な再生可能なダメージをあたえることができます。それゆえ強いリモデリング(再構築)がおこり、治療が難しいニキビ跡にも効果があります。
ニードルRF(ポテンツァ)の詳細はこちらをご覧ください。
ポテンツァダイヤモンドチップ
ポテンツァにはニードルRF以外に、ダイヤモンドチップという機能があります。これも高周波(RF)による治療です。
ダイヤモンドチップは「モノポーラ」と「バイポーラ」という2種類の高周波(RF)を連続照射します。
モノポーラは高周波(RF)が皮膚に垂直に照射され、約2~4㎜の深さの真皮深層から脂肪組織(おもに脂肪隔壁)に熱を加えます。
バイポーラは高周波(RF)皮膚の表面を水平方向に流れて真皮浅層を加熱します。
2つの照射方法を組み合わせで、真皮の浅層~深層と脂肪組織を加熱することが可能です。
高周波は真皮のコラーゲンに直接働き、熱で収縮させます。これは皮膚のタイトニングの即時効果です。続いて時間をかけてコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質(細胞外マトリクス)があたらしく産生されます(リモデリング)。同時に細胞外マトリクスを産生する線維芽細胞も増やす長期的効果がおこります。
脂肪組織に届いた高周波(RF)は脂肪組織の中の脂肪細胞は素通りして影響を与えませんが、脂肪隔壁で発熱します。脂肪隔壁とは枝を張ったように上に伸びた支持靭帯が脂肪組織を小さく区切っている分画(小部屋)です。脂肪隔壁が高周波(RF)の熱で締まって、脂肪組織が引き締まります。
ダイヤモンドチップは真皮のタイトニングと引き続いておこるリモデリング+脂肪組織のタイトニングで、たるみ改善効果があります。
![ダイヤモンドチップの治療メカニズム](/wp-content/uploads/images/74754811506846d223c66223d9750da3.png)
ダイヤモンドチップの治療メカニズム. モノポーラとバイポーラの高周波治療を同時におこないます。モノポーラでは電極から高周波が皮膚に垂直に放射され真皮の深部と脂肪組織にまで届きます。バイポーラは高周波が電極と電極を橋渡しするように皮膚表面に平行して真皮の浅いところを流れます。2つを連続して照射することで、真皮全層と脂肪隔壁を加熱できます。
ダイヤモンドチップの詳細はこちらをご覧ください。
超音波による治療(HIFU ハイフ)
HIFUは高密度焦点式超音波(High Intensity Focused Ultrasound)の英語の頭文字をとってHIFUと呼びます。
機器の先端は凹曲面状になっていて、発振された超音波を一点に同時に集中させて熱を発生させます。
高周波(RF)がある一定の範囲に熱を発生させるのに比べて、HIFU は正確な深さのある一点にピンポイントで確実に熱を発生させることが可能なのが特徴です。
「ピンポイントで確実に熱を発生させる」ことは加齢で弛んだSMASのタイトニングに最大の効果を発揮します。手術を除いてSMASを直接タイトニングができるのはHIFUだけです。
![HIFUの治療原理](/wp-content/uploads/images/57f5bb425b21fe488b23ee8d9a76f5b9-1.png)
HIFUの治療原理. 機器の先端(プローブ)は凹曲面状になっている。発振された超音波を一点に同時に集中させることができ、焦点では60度まで温度を上げることが可能。60℃では組織にタンパク質の熱凝固をおこすことが可能で。組織の確実なリモデリングを期待できる。
HIFUはほとんどの機器で1.5㎜、2㎜、3㎜、4.5㎜の治療部位に深度調整ができます。それぞれの深さのプローブ(先端の器具)を替えて真皮浅層、真皮深層、脂肪組織、SMASに熱凝固をおこします。
熱凝固をおこした組織はリモデリングといって、古い組織が新しい組織に置き換わります。
真皮ではコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質(細胞外マトリクス)を新しくして、弾力性やハリを復活させます。
脂肪組織では沈着した過剰な脂肪細胞の破壊と脂肪隔壁の熱凝固により過剰に沈着した脂肪を減らし、脂肪組織のタイトニングをおこします。ただし、ほほが痩せた人に繰り返し使用すると、ほほがより痩せてしまい、余計ほほが痩せた印象になることがあります。一方、ブルドッグ型のほほがたるんだ人には最適です。
真皮~脂肪組織~SMASの状況が改善して、顔のたるみを改善します。
HIFUの強みはやはり4.5㎜プローブです。繰り返しますが、この深さに熱を確実にくわえることができるのはHIFUだけです。SMASの弛緩の改善にはもっとも効果がある機器です。
![HIFUの治療メカニズム.](/wp-content/uploads/images/UFMPT2png.png)
HIFUの治療メカニズム. (左)4.5㎜の深度の加熱ではSMASに熱凝固をおこす。弛緩した脂肪組織と真皮を支えきれなくなったSMASはリモデリングにより収縮して、再び、脂肪組織と真皮を引き上げるようになる。(右)2㎜、3㎜の深度の加熱では真皮と脂肪組織に熱凝固をおこす。真皮のリモデリングでは細胞外マトリクスが新生して弾力性をハリが復活する。脂肪組織の熱凝固は、沈着した過剰な脂肪細動を破壊して減少させる。また、脂肪隔壁は収縮して、脂肪組織のタイトニングもおこる。頬がこけたような顔にHIFUを繰り返すと脂肪組織が減少してさらに、痩せた状態が進行するので注意が必要である。
ウルトラフォーマー3の詳細はこちらをご覧ください。
IPL(フォトフェイシャルなど)
美容業界で長い歴史をもつフォトフェイシャルを含めた光治療であるIPLはくすみを薄くして肌の状態を良くするのによく用いられる機器です。
みなさんはフォトフェイシャルがたるみの予防になることをご存じでしょうか?
フォトフェイシャルで用いる光はメラニンに吸収され色素病変を改善します。光はほかにも真皮、血管の赤血球に吸収されます。
フォトフェイシャルをおこなうと肌の調子がよくなるのは、真皮がほどよく加熱されているからです。
これまでご説明した高周波(RF)や超音波同様、フォトフェイシャルも真皮を加熱して「修復可能な微細な熱傷」をつくります。
真皮では線維芽細胞が増殖して、変性した細胞外マトリクスを分解吸収する一方、新しい細胞外マトリクスを新生するリモデリングがおこります。
フォトフェイシャルのリモデリング効果はニードルRF(ポテンツァ、シルファーム)やダイヤモンドチップなどの高周波(RF)治療やウルトラフォーマーなどのHIFUと比べると弱いけれど、手軽に繰り返しおこなうことにより、たるみ予防効果があります。
フォトフェイシャル単独でたるみを治療するのは、やや力不足ですが、たるみの予防、現状維持への努力にはよい治療方法です。当院は4か月ごとのIPLをすすめています。
フォトフェイシャルM22の詳細はこちらをご覧ください。
脂肪溶解注射
脂肪溶解注射では、デオキシコール酸もしくはフォスファチジルコリンという成分がはいった薬剤を注射器で脂肪を減らしたい部分に注入します。
薬剤は脂肪細胞を分解して溶かします。血中やリンパ管に溶け込んだ脂肪の成分は、腎臓から尿とともに体外へ排出される仕組みです。
脂肪溶解注射の詳細はこちらをご覧ください。
スキンケア/マッサージ
スキンケアは紫外線での皮膚のダメージを避けるためにサンスクリーン(日焼け止め)の使用はぜひおすすめします。
私はカナダに留学、米国の研究所で働いていました。北米には白人、黒人、黄色人種さまざまな肌の色の人がいます。
顔のたるみの出方が早いのは白人、黄色人種、黒人の順です。これは肌の色が濃いほど紫外線による真皮へのダメージが少なく、老化が遅いからです。
また、保湿も重要ですね。
マッサージが顔のたるみに効くかは、賛否両論あるようです。方法によっては逆効果になるので注意が必要です。
資生堂の研究でのマッサージ方法をこの後に記載しています。
専門でないので詳細はわかりませんが、表情筋を鍛えるエクササイズがあるようです
治療方法のまとめ
これまでの治療方法を下のようなピラミッドで表してみました。ピラミッドの上にいくほど効果が高い一方、切開、麻酔、針での穿刺など負担が大きくなります。
![たるみ治療の効果比較](/wp-content/uploads/images/fd389c5c670f99797800b53c2b630554.png)
たるみ治療の効果比較. 効果が高い順に手術、スレッドリフト、ヒアルロン酸注入、機器(レーザー、HIFU、高周波・ラジオ波RF、IPL)となります。身体への負担がある施術ほど効果が高くなります。このほか、ブルドック型の頬のたるみ、二重あごには脂肪溶解注射が有効です。
リフトアップ施術の比較
ニードルRF (ポテンツァ、シルファーム) |
RF (ダイヤモンドチップ) |
超音波 HIFU (ウルトラフォーマー3) |
ヒアルロン酸注入 | スレッドリフト | |
治療回数 | 3回 | 1回 | 1回 | 1回 | 1回 |
効果持続期間 | 3か月※ | 3か月※ | 6か月 | 1~1.5年 | 半年~1年 |
リフトアップ | ★★ | ★★ | ★★★ |
★★★★ |
★★★★★ |
タイトニング | ★★★ | ★★★★ | ★★★ | ★ | ★(部分的に★★★) |
部位への効果 | 真皮 | 真皮/脂肪隔壁 | 真皮/脂肪組織/SMAS | 骨/脂肪/支持靭帯 | 脂肪組織 |
ダウンタイム | ほとんどなし | ほとんどなし | ほとんどなし | 注射痕のみ | あり |
※効果が出るには、当院では最初に4~6週間おきに3回の治療をおこないます。その後は3か月間隔でここなうことをすすめています。
6.自宅でできる顔のたるみ改善エクササイズ/マッサージ
マッサージが医学的にたるみ改善につながる根拠はないようです。
しかし、最近では毛に付着する立毛筋の方向にマッサージすると、たるみ防止の効果があると言われています。
資生堂の研究では、顔の皮膚に存在する毛包に付着する立毛筋を活性化することがたるみの改善に繋がる可能性があるとしています。
![たるみマッサージ方向](/wp-content/uploads/images/51e0d949aa5214c7cb492ca6eb9b8fbf.jpg)
資生堂の培養皮膚を用いた研究では、立毛筋の向きに沿って皮膚をストレッチすることで、立毛筋が活性化されることがわかっています。彼らは皮膚が重力によっておこる変形に抵抗するシステムを発見し、「ダイナミックベルト」と名付けています。私の顔写真にダイナミックベルトの流れを描いてみました、この線に沿ったストレッチを行うことでたるみの改善につながる可能性が考えられそうです。
7.顔のたるみへの栄養面からのアプローチ
皮膚の構成成分を摂る
コラーゲン
真皮の弾力性を保つのはコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質です。これらは細胞外マトリクスといいます。
このなかでコラーゲンを多く含んだ食品を摂ることは、たるみへの対抗となります。
コラーゲンを多く含んでいる食品としては、手羽先、鶏軟骨、牛すじ、豚足、フカヒレなどがあります。
しかし、毎日このような食品を摂るのも大変です。私はコラーゲンのサプリメントを取るのは良い方法と思います。
サプリメントにはコラーゲンの合成をサポートするビタミンC、鉄分が含まれているものがあります。
老化に対抗する抗加齢食品を摂る
ビタミン
たるみの理由に紫外線やブルーライトによる光老化ががあります。とくに紫外線は真皮に到達して活性酸素を発生します。
活性酸素は真皮の細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質)を劣化変性させます。
ビタミンA・E・Cは抗酸化ビタミンと呼ばれ、活性酸素を中和します。
ポリフェノール
ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素の成分です。
ポリフェノールは抗酸化作用が高く、有害な活性酸素を無毒化します。
代表的なポリフェノールを示します。()内は各ポリフェノールを多く含む食品です。これらの一部はサプリメントして摂取することもできます。
- アントシアニン (赤ワイン、ブルーベリー、カシス、ブドウ、赤ジソ、紫キャベツ、なす)
- カテキン (緑茶、紅茶)
カカオポリフェノール (ココア、チョコレート)
ルチン (韃靼そば、かんきつ類、アスパラガス、トマト、ほうれんそう、ブロッコリー、ケール、ナス、タマネギ、レバー)
フェルラ酸 (コメ、大豆、小麦、コメぬか)
コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸) (コーヒー)
クルクミン (ターメリック)
ショウガオール (生姜)
肌によくない食物(高脂肪食、アルコール、糖質の取りすぎ)を避ける
食品の摂取でも活性酸素をつくりだすことをご存じですか。
高脂肪食、アルコール、糖質の取りすぎは体内の活性酸素をふやし、老化をすすめます。
抗加齢医学では有名な実験があります。アカゲザルを2つのグループに分けて、一方のグループに食事(カロリー)制限を20年間おこなった研究です。
結果はカロリー制限をおこなったグループでは加齢を遅らせることができ、延命効果を高めたというものです。
またラットも用いたカロリー制限の実験では、通常の食事を与えられたグループでは加齢により毛並が悪くなるのに、カロリー制限食のグループで毛並みがよくなっています。
これらは、我々人間にも当てはまると言われています。
食べ過ぎず、腹八分目の食事というのは抗加齢効果があり、たるみ防止にも役立つはずです。
8.日常でできるたるみ予防と意識すべきポイント
スキンケア・保湿と紫外線対策
紫外線により光老化が、皮膚のハリや弾力性を低下させます。これを防ぐためにはスキンケアや紫外線対策は有効です。
スキンケアは手やコットンで叩き込んだり、擦るのは避け、優しく丁寧におこなってください。皮膚に摩擦を加えると表皮が薄くなります。表皮は真皮を紫外線から守っているので、薄くなると紫外線が真皮に浸透しやすくなります。
日焼け止めの使用はかならず必要です。みなさん1日1回は外用していると思います。日焼け止めの効果は短く2~3時間と言われています。朝1回塗ったきりだと、夕方の外出でおもわぬ紫外線ダメージを受けている可能性があります。春、夏の夕方になっても日が高い時期では、帰宅、夕方の買い物に行く前に2回目を塗ることをおすすめします。
また日焼け止めだけでは紫外線を100%防ぐことはできないので、以下のような工夫も大切です。
- できるだけ日陰を歩く
- 日傘の使用
- 帽子、サングラスの使用
- 紫外線の強い時間帯の外出を避ける
9.美容外科と美容皮膚科のたるみ治療の違い
たるみの治療で美容外科と美容皮膚科の違いは手術ができるかどうかです。
たるみの治療では様々な顔面除皺術(フェイスリフト)がおこなわれます。その内容は局所麻酔でできる皮膚筋膜切除術といった簡単な方法から、全身麻酔下で長時間かかっておこなう手の込んだ術式まで様々です。
これができるのが美容外科になります。当然、形成外科医がだれでもできるわけではなく、熟練した技術を持った医師である必要があります。
10.たるみ治療でクリニックをどう選ぶか
手術を除くと、美容外科、美容皮膚科でおこなう治療方法は同じといえます。
たるみ治療はスレッドリフト、ヒアルロン酸注入、超音波、高周波(RF)、レーザー、IPL、脂肪溶解注射などを使います。
外科、皮膚科であれ医師にスレッドリフト、ヒアルロン酸注入の豊富な経験があれば、期待に添える効果がでるはずです。
また、超音波、高周波(RF)、レーザー、IPLなどの機器は通常では医師の指示のもと、看護師がおこなうので、これも豊富な経験があれば問題はないと思います。
治療効果に差がでるのは、「診たて」です。冒頭には「たるみは顔面の各組織の萎縮と弛緩が組み合わさっているもの」と書きました。
各組織とは骨、SMAS、脂肪組織、真皮、(表皮)です。このうち、どこの組織を萎縮あるいは弛緩しているので、どのように治療するかを判断することが、とても大切です。
診察する医師が、あなたの顔を触ったり、引っ張ったり、押したりしていますか?これをしないとどこを治療すべきかわかりません。
だた、顔も触らずに、チラッと診ただけで、「これはHIFUでウルトラフォーマーだね」、「これはポテンツァだね」などという医師は「大丈夫かな?」と思ってください。
たるみの原因は、真皮、脂肪組織、支持靭帯、SMAS、骨のいろいろな要因が複雑にからみあっていて、個人個人で状況は違います。顔を触って、診て、状態に合わせた治療方法を提案できるのが、信頼できる医師と思います。
11.山手皮膚科クリニックのたるみ治療
当院ではさまざまたるみ治療の選択肢を用意しています。
根本的要因から治療する方法
ヒアルロン酸注入、スレッドリフト
顔のたるみ治療では、根本的な部分である骨の吸収(骨萎縮)、皮下脂肪の下垂(偏移)、支持靭帯やSMASのゆるみを治療する方法はもっとも効果がある根本的な治療といえます。
そのなかでヒアルロン酸注入はもっともポピュラーで効果の確実な治療方法です。
しかし、ヒアルロン酸注入でも苦手なたるみ部位があります。それは、ブルドッグ顔といわれているマリオネットラインに覆いかぶさるように下垂した脂肪組織です。これは、支持靭帯の弛緩と内側の表層脂肪の沈着と下垂からおこります。
これには、スレッドリフトが良い方法です。また、脂肪溶解注射で脂肪を減少させる方法もあります。
これらの方法はいずれも注射針を刺す必要があり侵襲的治療法を呼ばれます。1回の治療で目に見える効果がでます※。
※ヒアルロン酸注入とスレッドリフトは同日に治療をおこないません。
ヒアルロン酸注入の詳細はこちらをご覧ください。
スレッドリフトの詳細はこちらをご覧ください。
脂肪溶解注射の詳細はこちらをご覧ください。
機器を用いて治療する方法
ダイヤモンドチップ+ウルトラフォーマー (ダイヤモンドハイフ)
「注射針を刺すのは怖い」という方は当然いらっしゃいますし、それが普通です。
顔のたるみ治療では、注射針を刺さないで機器を用いた治療方法があります。非侵襲的治療と呼ばれます。
光、高周波(RF)、超音波、レーザーを用いた治療です。これらは、顔の輪郭の土台となる骨、SMAS、支持靭帯、脂肪組織の上に存在する真皮の治療に重点を置いた治療方法です。
これらの中で超音波を用いたHIFU(ハイフ)は唯一、SAMSのタイトニング(引き締め)が可能です。
当院では、高周波(RF)治療器ポテンツァをつかったダイヤモンドチップとウルトラフォーマーを同時におこなうたるみ治療をおこなっています。「ダイヤモンドハイフ」と呼んでいます。
ラジオ波と超音波治療を組み合わせた、いわば「良いとこ取り」のたるみ治療です。
![](/wp-content/uploads/images/359fe461bc0240cc24d36d71f44febbe.png)
ダイヤモンドチップ+ウルトラフォーマー (ダイヤモンドハイフ)の治療メカニズム. ダイヤモンドハイフとは山手皮膚科クリニックで勝手に名付けています。高周波(RF)モノポーラー治療のダイヤモンドチップは真皮にまんべんなく熱を与えることができるすぐれた高周波(RF)治療です。ニードルRFのような表面麻酔を必要としません。また、高周波は脂肪細胞には影響を与えずに、脂肪隔壁に熱を加えるので、脂肪組織のタイトニングができます。欠点はたるみ治療でぜひともアプローチしたいSMASに有効な熱を与えられないことです。一方、HIFUは4.5㎜プローブをつかうことで確実にSMASに熱凝固を与えることができ、SMASのタイトニングが可能です。ダイヤモンドチップとHIFUを組み合させることで真皮~SMASをまんべんなく加熱することができます。
ダイヤモンドチップ+ウルトラフォーマーについてはダイヤモンドチップのページのなかで説明しています。詳細はこちらをご覧ください。
山手皮膚科クリニックタイプ別顔のたるみ治療
当院では症状を拝見して、ご要望に合った治療をご提案します
たるみのタイプによる治療法
顔のたるみを3つに分類してみました。
下図左は頬部に脂肪が沈着して下垂して、俗に「ブルドッグ型」といわれる顔のたるみです。
右は顔の痩せがあり、頬部がコケていて(痩せていて)、顔がたるんでいるタイプです。
中央はその中間です。
いずれのタイプでも治療を1回の治療※でおこなう場合は、顏の輪郭形成の土台となる骨にアプローチするヒアルロン酸注入を核としています。
ブルドッグ型ではヒアルロン酸注入をおこなってから、経過を診て、希望があれば1~3か月あけてスレッドリフトや脂肪溶解注射をおこないます。
通って回数をかけて治療する、注射針を刺すのは怖いという方には、ヒアルロン酸注入やスレッドリフトはおこなわず、ダイヤモンドチップとHIFUを組み合わせた治療がお勧めです。
「顔が痩せていてたるんでいる」方には、HIFUをおすすめしない場合があります。HIFUを繰り返すと脂肪組織が薄くなり、痩せがさらに目立つことがあるからです。
![顔のたるみを3つに分類](/wp-content/uploads/images/162198a4e75af95f14ab9be896661a8b-1.png)
顔のたるみの3つの分類. 山手皮膚科クリニックではそれぞれにあった治療方法を提案します。
頬がブルドック型にたるんでいる
![頬がブルドック型にたるんでいる場合の治療の選択肢](/wp-content/uploads/images/9fb3f0ef1858ccbced408aef7730c73e.png)
頬がブルドック型にたるんでいる場合の治療の選択肢
たるんでいる
![顔がたるんでいる場合の治療の選択肢](/wp-content/uploads/images/d20a8017eb8c5cebacde3afd78a1971f.png)
顔がたるんでいる場合の治療の選択肢
顔が痩せていてたるんでいる
![顔が痩せていてたるんでいる場合の治療の選択肢](/wp-content/uploads/images/f31952a25b2b41f51ff371f7888e54fe.png)
顔が痩せていてたるんでいる場合の治療の選択肢
ダイヤモンドハイフの治療動画※治療は現在準備中 ウルトラフォーマーMPTへ移行予定
ウルトラフォーマー3から最新のウルトラフォーマーMPTへ変更のため、現在準備中です。
12.治療の流れ
1)予約
診察はすべてWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリニック受付ならびにお電話では予約の受付はいたしておりません。
「予約サイト」へいき、選択メニューボタン
から 「たるみ・ほうれい線」のご相談 を選択ください。
2)初診
診療は自費診療です。初回相談料は3,300円(再相談は1,650円)となります。症状を拝見し、最適な治療法をご提案いたします。
3)治療
当日の予約に空きがある場合に限り、カウンセリングと同日に施術をお受けいただくことが可能です。
カウンセリング時に当院からの同日施術への誘導、営業行為は一切ありませんのでご安心ください。
13.施術料金
(現在準備中)