更新日:/公開日:2021.6.28
こちらのコンテンツは、山手皮膚科クリニック院長の豊福一朋が自身のこれまでの研究ならびに経験、関連書籍、学術報告などをもとに独自に作成したものです。将来において当院における治療方法、治療後の処置、使用機器、治療の流れなどについて内容が変更となる可能性があります。
1.顔のたるみとは?
顔のたるみとは
顔のたるみとは「ほうれい線が深くなる」「顔の輪郭がぼやける」「フェイスラインがくずれる」「顔にハリがなくなった」といった症状のことをいいます。ほとんどすべての人が30代になると顔のたるみに気づき始めます。
顔のたるみをインターネットで検索すると乾燥・紫外線・筋肉の衰えが「たるみの三大原因」として紹介されていたり、保湿や紫外線予防、食事や睡眠といった生活習慣における対策の必要性が説明されていたりします。しかしながら、乾燥・紫外線・筋肉の衰えが「たるみの三大原因」であると定義している医学書はありません。
顔がたるむ原因は、顔面を構成している皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の全てが年齢を重ねるにつれて老化していくからです。
つまり、顔のたるみは、どんなに見た目が良く生まれた人でも、美容整形をして見た目を変えた人にも、生まれもった自身の容姿を気に入って生きてきた人にも必ずおこる加齢による進行性の症状なのです。マッサージや表情筋トレーニング、美顔器、化粧品で顔のたるみを改善しようとすると、反対に顔のたるみやシワを悪化させてしまうリスクがあることをご存じでしょうか?顔のたるみを改善し若々しい見た目を手に入れるためには、たるみの原因を正しく知る必要があります。
こちらのページでは〔顔のたるみの原因〕〔年代別の顔のたるみの症状〕〔顔のたるみの原因に合わせた美容皮膚科での美容医療施術〕をそれぞれ詳しく説明していきます。
山手皮膚科クリニックでは、医師が診察・カウンセリングをおこない患者様のたるみの原因に合った治療法をご提案しております。顔のたるみにお悩みで、ご自身に合った治療をお探しの方は、当院にご相談にいらしてみませんか?
2.顔のたるみの原因
顔がたるむ原因は、顔面を構成している皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化によるものです。顔面を構成するそれぞれのパーツの老化による症状を簡単にまとめてみました。下の表をご覧ください。あなたに当てはまる症状はありませんか?
顔面を構成するもの | 老化によりでてくる「たるみ」の症状 |
皮膚 | 小じわ(ちりめんジワ)、毛穴の開き、肌にハリ・ツヤがなくなる、顔色がさえない、乾燥する |
筋肉(表情筋) | フェイスラインがぼやける、表情ジワが増える(目の周りのシワ、口周りのシワ、額のシワなど)、口角が下がる、二重あご(あごと首の境界がはっきりしなくなる) |
脂肪組織 | 顔の輪郭が凸凹する、フェイスラインがぼやける(ブルドッグ様の頬)、ハリがなくなる、顔が痩せる、二重あご |
支持靭帯 | 深いシワ(ほうれい線、マリオネットライン、ゴルゴライン、下眼瞼のシワなど)、フェイスラインがぼやける(ブルドッグ様の頬) |
骨 | 鼻の穴が横に広がる、顎が小さくなる、口がすぼまる、額・こめかみの痩せ、ゴルゴライン、眼窩脂肪が突出する、二重あご(あごと首の境界がはっきりしなくなる) |
これから、顔面を構成している皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化による変化と、容姿にどのように現れるのかを説明します。
「セルフケアでなんとかしたい。若返らなくてもいい。美容医療の力は借りたくない。」とお考えの方もいらっしゃると思います。それは普通のことで、良いと思います。
それでも、どうか〔顔のたるみの原因〕〔年代別の顔のたるみの症状〕まではお読みいただきたいです。
間違ったセルフケアを続けて顔のたるみを悪化させないためにも、あなたの症状がなぜ起きているのかを知ることは大切だからです。
皮膚の老化によるたるみ
皮膚は表皮、真皮、皮下組織(皮下脂肪)の三層構造をしています。表皮と真皮の老化が皮膚の見た目に大きく影響をもたらします。加齢に伴い、わたしたちの表皮と真皮では何が起きているのでしょうか?表皮と真皮の老化現象を知ると、セルフケアや化粧品、生活習慣の改善だけでは、皮膚のたるみの症状を治すことは不可能であることが良くわかります。
皮膚の老化には、「自然老化」と「光老化」があります。自然老化は生理的老化ともいい、加齢性の皮膚の機能低下のことを指します。一方、光老化は紫外線を浴びることで、慢性的に皮膚の細胞が傷害されて生じる老化のことです。わたしたちが日ごろ、加齢性変化として見ている「皮膚のたるみ」は、自然老化と光老化の2つの老化が合わさった状態です。具体的には、小じわ(ちりめんジワ)、毛穴の開き、肌にハリ・ツヤがなくなる、顔色がさえない、肌の乾燥を自覚します。
皮膚の自然老化では、遺伝的因子や呼吸や喫煙、過食、ストレスなど生理的変動因子が皮膚の細胞内部を傷つけることが主な原因です。皮膚の光老化では、主に紫外線のUVAが原因となります。
表皮の老化
自然老化
- 基底細胞の分裂速度の低下、ターンオーバー周期の延長
- 表皮突起(および真皮乳頭)の減少
- 細胞間脂質、天然保湿因子の減少
光老化
- 顔のたるみに影響する変化はあまりない
真皮の老化
自然老化
- 毛細血管とリンパ管の減少
- 血管がもろくなり内出血による紫斑ができやすくなる
- 線維芽細胞の機能低下、線維芽細胞数の減少
- 膠原線維の減少
- エラスチン、基質の減少
- 表皮と真皮の境目の部分である乳頭層の減少 → 真皮から表皮細胞への栄養供給が減少する
- 真皮乳頭(および表皮突起)の減少
- 汗腺、皮脂腺の機能が低下および数の減少
光老化
- コラーゲン、エラスチンの架橋形成を妨げる
- コラーゲンやエラスチンの消化酵素を大量につくる
- ヒアルロン酸の減少
- 弾性線維(主成分はエラスチン)の破壊と機能低下
- 異常な弾性線維の増加
つまり、表皮と真皮が老化すると、皮膚が薄くなり、伸縮性は乏しくなり、皮膚全体のボリュームが減少します。なぜなら、皮膚を構成している細胞や血管、繊維組織などの数が減少し、それぞれの働きが低下するために新生される数は減少するわけなので、皮膚が身体全体を覆う1枚の袋状の膜だと考えると、成長や体重の増加などで最大に伸び切ってからは、その中身が徐々に減っていくわけです。めいっぱい膨らませた風船の中の気体が、ゆっくりゆっくり抜けてしぼんでいくように、皮膚のハリは失われていきます。
筋肉(表情筋)の老化によるたるみ
皮膚の光老化の原因となる紫外線は真皮までしか到達しません。つまり、皮膚の表皮・真皮以外の顔面を構成する筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化は自然老化ということです。
表情筋は、目や口などの穴の空いているところを覆うように存在しています。そしていろいろな方向に動かせるように、骨に最低限しか付着していない、あるいは支持靭帯によって間接的に骨に付着しているため、加齢とともにたるんでいきます。
表情筋の老化
- 筋肉の弛緩・収縮幅の減少(表情筋の動きが悪くなる)
- 筋線維の減少(表情筋がやせる)
- 筋肉が付着している支持靭帯や骨の加齢性変化による影響を受ける
大手家電メーカーの自社製品紹介に関連するサイトで表情筋を鍛えるトレーニングが解説されていたりします。表情筋が衰えると感情を表す表情が乏しくなるという説明には一理ありますが、ものは言いようだなあと感じます。歳をとるにつれて社会との関わり方が変わることで感情表現を要するコミュニケーションが減少し表情の変化が乏しくなるから、表情筋が使われなくなり表情筋が衰えるのです。
毎日毎日表情筋のトレーニングをして、表情筋に刺激を与える美容機器を使用したとしても、顔のたるみの原因は表情筋の衰えだけで起こっているわけではありませんから効果は限定的です。もちろん、しないよりはした方が表情筋の衰えを抑制する可能性はあります。常々一人で表情筋のマッサージやトレーニングをおこなうよりも、笑顔で過ごすこと、口角を上げることを心がけたり、表情豊かに人とコミュニケーションをとれば、それだけで十分表情筋を動かすことができて、表情筋の衰えを防げると思いませんか?
「顔のたるみ」を改善する方法として、表情筋を鍛えることによる効果は限定的です。なぜなら、表情筋の動きを助けている支持靭帯の老化や、表情筋の負荷となっている顔の脂肪組織の下垂や蓄積が改善されなければ顔のたるみは改善されないからです。表情筋の老化だけが、顔のたるみの原因であることはまずありません。
脂肪組織の老化によるたるみ
顔のたるみの原因を正しく理解するためには、皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化による変化を知る必要があります。皮膚と筋肉(表情筋)の老化による変化の内容は、この記事を読んでくれているあなたがイメージしやすいように意識して書きました。
これから脂肪組織の老化について説明していきますが、山手皮膚科クリニックが考える顔のたるみの3大原因は「脂肪組織の老化」「支持靭帯の老化」「骨の老化」です。脂肪組織と支持靭帯と骨の老化が複合して顔のたるみを形成しています。例えば、ほうれい線は皮膚に生じるシワですが、ほうれい線が徐々に深くなっていく原因は皮膚の乾燥や皮膚の老化ではありません。頬を構成する脂肪組織、支持靭帯、骨の老化による変化で頬のフェイスラインにあたる部分に顔面の脂肪組織がずり落ちている状態と言えます。
ほうれい線に対して保湿化粧品での局所的なスペシャルケアやリフトアップマッサージをしたり、コロコロ美顔器で消そうとしても、下垂した脂肪の配置が変化することはなく、むしろ皮膚を伸展させたり、老化した皮膚に局所的に圧が加わり、皮膚の血管が傷ついて内出血ができたり、表皮と真皮の境界部である乳頭層を潰してしまい皮膚萎縮を引き起こし皮膚の老化を加速させるおそれがあります。
ここで顔のリフトアップ方法について結論を述べてしまいます。皮膚や筋肉(表情筋)へのアプローチだけでは、ほうれい線を浅くしたり、フェイスラインをスッキリさせたり、頬をふっくら丸くしたりは絶対にできません。
その理由をこれから説明していきます。専門的な単語がたくさん出てきます。当院の職員でも、一読しただけでは理解しきれない内容が続きます。何度もお読みいただき、あなたのお顔に徐々にあらわれているたるみの症状の原因を確認していきましょう。
顔面の脂肪組織は、SMASおよび表情筋で「浅層脂肪」と「深層脂肪」に分けられます。浅層脂肪は表情筋の上に、深層脂肪は表情筋の下にあって、いくつかのコンパートメントに区画分けされています。またそれぞれのコンパートメントは脂肪隔壁で分断されています。
浅層脂肪の、上顔面や側面(額やこめかみ)のコンパートメントは可動性が乏しく加齢に伴い萎縮および減少するため、額やこめかみが痩せて見えるようになります。顔面中央のコンパートメントは可動性が良く加齢に伴い下垂するため、フェイスラインのボリュームが増加したように見える、ブルドッグ顔になる原因の一つです。
深層脂肪は浅層脂肪に比べてボリュームがあり、それぞれが被膜に包まれています。深層脂肪は可動性は乏しいです。
脂肪組織は、皮膚の張りと滑らかさのために必要なものであり、真皮を筋肉の伸縮負荷から守る働きがあります。
他のサイトでも顔面の脂肪組織の説明で「◯◯コンパートメント、◯◯compartment」「◯◯ファット、◯◯fat」という単語を目にしたことがありませんか?日本語訳すると「コンパートメント、compartment=区画」「ファット、fat=脂肪」です。
顔面の脂肪組織の名称説明のイラストは顔面の脂肪組織の位置と名称を説明したものです。左側に「浅層脂肪」、右側に「深層脂肪」を描きました.
脂肪組織の老化による変化
- 浅層脂肪は加齢とともに萎縮するという説とコンパートメントごとに下垂と肥大が生じるという説がある
- 深層脂肪は加齢とともに萎縮、減少する
- 浅層脂肪も深層脂肪も重力により脂肪の配置が変化する
- 脂肪組織の加齢変化は体重の増減にも影響され個人差が大きい
- 上顔面や顔面外側のコンパートメントは加齢とともにボリューム減り、萎縮していく
- 顔面中央では脂肪萎縮は少なく、沈着脂肪の重みによりたるみ形成を助長する
- 過剰に沈着した脂肪の重みにより支持靭帯などの線維性支持組織を破壊し伸張させる
支持靱帯の老化によるたるみ
顔のたるみの原因の一つに「支持靭帯の老化」があります。支持靭帯は英語ではretaining ligamentと表記されます(retaining=保つ、ligament=靭帯)。顔のたるみ治療に関する論文や書籍などでは、英語表記での説明がほとんどです。しかしながら、一般の方向けの文章に各支持靭帯の名称を英語で表記してしまうと、支持靭帯の役割や位置、支持靭帯の老化により生じる顔のたるみをイメージしづらくなってしまうおそれがあるので、あえて日本語に訳して説明していきます。
顔面の支持靭帯の位置や役割を理解することは、顔のたるみの原因とその治療を理解するうえで欠かせません。
インターネットには顔のたるみについて多くの情報があります。顔のたるみの説明をしている情報の中で皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の全てが原因であると明記していないものは、この全てへのアプローチができない業界や会社、医療機関(クリニック)のものだと私は考えています。引き続き、骨やSMAS(スマス)の項目でも医学的知識に関する内容が続きますが、顔のたるみの原因の全体像を知ることで、効果のないたるみ対策・たるみ予防に無駄な時間とお金を費やす必要がなくなります。ゆっくりじっくり読み進めていただけると嬉しいです。
顔面の支持靭帯は、顔面骨の骨膜や表情筋の筋膜を起点とし、真皮まで伸びた線維組織の束です。頬部ではSMASを介して真皮まで伸びる垂直な線維組織で皮膚を支えています。SMASから真皮に伸びる垂直線維のことを脂肪隔壁ということもあります。顔面の脂肪組織はこの支持靭帯によって区切られたコンパートメントで構成されており、顔のたるみは各支持靭帯と支持靭帯の間に生じます。
人の顔を表から皮膚、脂肪組織、表情筋を重ねたお面に例えると、支持靭帯は顔面骨からこのお面が剥がれ落ちないようにつるしているゴムひものような役割を担っています。
名称 | 役割 | |
① | 下眼瞼靭帯(ティアトラフ靭帯) tear trough ligament |
下眼瞼の脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
② | 眼窩頬部靭帯 orbicularis retaining ligament(ORL) |
眼窩周囲、こめかみ付近の脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
③ | 頬骨靭帯 zygomatic ligament |
頬骨直上の頬のSMAS、脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
④ | 咬筋靭帯 masseteric ligament |
咬筋筋膜から生じ、頬骨のやや下側の頬のSMAS、脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
⑤ | 上顎靭帯 maxillary ligament |
頬中央(尾翼のすぐ横)の脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
⑥ | 下顎靭帯 mandibular ligament |
頬下縁(下顎)のSMAS、脂肪組織、筋肉、皮膚を支える |
※SMAS、脂肪組織、筋肉、皮膚は「軟部組織」と総称されることがあります。
支持靭帯の老化による変化
- 経年劣化し伸びてたるむが、周囲の組織に比べると比較的強度は維持されている
- 脂肪隔壁(偽性支持靱帯)に支えられた脂肪組織のコンパートメントの緩みが強く出て下垂してくる
- SMAS、脂肪組織、骨の老化による変化に大きく影響を受ける
骨の老化によるたるみ
顔面を構成する骨の老化を正しく理解するために、知っておいたほうがよい知識が2つあります。
ひとつは〔骨代謝〕についてです。もうひとつは〔顔のたるみに影響する顔面骨の部位〕です。
骨代謝とは
人の骨は20歳頃に成長を完了すると、それ以降は長さも太さも変わりません。成長を完了した骨においては、古くなった骨が溶かされ、新しい骨が再生されています。
古くなった骨が溶かされることを骨吸収といい破骨細胞がその役割を担っています。骨吸収が生じた場所に新しい骨を作ることを骨形成といい骨芽細胞がその役割を担っています。これを骨代謝といいます。健常成人の骨代謝ではこの骨吸収と骨形成のバランスが保たれています。そのバランスが崩れると骨の異常が生じます。骨代謝は甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモン、性ホルモンであるエストロゲンなどの影響を受けます。女性が閉経により骨粗鬆症になりやすくなるのは、エストロゲンに骨形成を促進する働きがあるためです。
顔面骨の老化による変化
顔面骨は顔のフレームの土台となるものです。加齢とともに全体の大きさは変わりませんが、局所的に骨吸収が生じやすい部位があります。この局所的に骨吸収が生じやすい部位が、〔顔のたるみに影響する顔面骨の部位〕のことです。つまり前額骨、側頭骨、眼窩、梨状口、下顎骨、上顎骨は局所的に骨吸収が生じやすい部位となります。顔面骨の形状や加齢による局所的な骨吸収が始まる早さは、人種、性別、年齢によって個人差が大きいです。
顔のたるみに影響する顔面骨の変化
名称 | 骨の老化による変化と影響 | |
① | 前額骨(ぜんがくこつ) | 前額骨の骨吸収がすすむと、額(おでこ)の中央が一直線にくぼんで見えるようになります。表情筋による額のシワはボトックスで予防できますが、額の骨吸収の進行による額のボリュームボリュームダウンによるシワはヒアルロン酸などでボリュームを出す治療が必要です。 |
② | 側頭骨(そくとうこつ) | 側頭骨の骨吸収がすすむと、こめかみが凹みます。 |
③ | 眼窩(がんか) | 眼窩の骨吸収がすすむと、眼窩の穴は広がります。結果、目が落ちくぼみクマができます。 |
④ | 梨状口(りじょうこう) | 梨状口の骨吸収がすすむと、梨状口の穴が広がり、鼻が横に広がって見えるようになります。若いときには幅が狭くツンと上を向いていた鼻が、加齢に伴い横に広がって見えるようになります。 |
⑤ | 上顎骨(じょうがくこつ) | 上顎骨の骨吸収がすすむと、鼻下部分の皮膚に縦皺が入りやすくなり、ヒゲが生えたような影ができる場合があります。加齢に伴う口輪筋の萎縮や下顎骨の骨吸収の進行の影響もあり、おちょぼ口になります。 |
⑥ | 下顎骨(かがくこつ) | 下顎骨の骨吸収がすすむと、顎が短くなります。マリオネットラインの原因の一つです。 |
美容クリニックでの顔のたるみ治療では、この顔面骨の変化は見た目を自然な感じに若返らせるために考慮しなければならない非常に大事な要素となります。しかしながら、顔を外側から見るときに、骨の老化は絶対に目で見ることができない部分であるため、あなたが「骨の痩せが顔のたるみの原因になっているなんて」と驚くのも無理はありません。
SMASについて
ウルセラをはじめとしたウルトラフォーマーMPTなどのHIFU(ハイフ)治療やフェイスリフト手術のメインターゲットとなるSMAS(スマス)とは?
SMASの老化による緩みは顔のたるみの原因となります。SMASとは何かを知ることで、美容皮膚科で行われる医療ハイフのメインターゲットとなり、HIFUがどうして画期的なたるみ治療といわれるのかがお分かりいただけるはずです。
SMASとはSuperficial muscular aponeurotic systemまたはsuperficial musculoaponeurotic systemの略でスマスと読みます。これを直訳すると「表在性の筋膜、腱膜からなる組織」です。
まず、SMASは表情筋ではありません。SMASを表在性筋膜と訳して説明しているサイトが多い印象ですが、それでは読者はSMASの正確な構造をイメージしづらいと感じています。筋膜は「筋肉とその他の組織を包む膜のこと」を言うので、SMASを表在性筋膜と訳すことは間違いではないのですが、筋膜と訳してしまうと主に表情筋や筋肉と関連するもののようなイメージをもってしまうかもしれません。
これから先の文章はSMASの「説明文」です。「解説文」ではありません。一般の方にはなじみのない単語がありますが、まずお読みいただきたいです。
この「説明文」をもとに、「つまり、SMASとは何か」を解説いたします。
SMAS説明文
SMASは人の顔面に存在する薄く強靭な平面状の組織です。表情筋膜と皮下結合組織、表情筋によって構成されています。ひとつながりの面状をしていますが、その構成はエリアごとに様々です。SMASの一部のエリアは筋線維で構成されています。筋線維とは筋肉を構成する線維状の細胞のことです。また、他のエリアは線維組織や腱膜で構成されています。線維組織は主に膠原線維(コラーゲン)などのタンパク質でできている結合組織のことです。腱とは骨と筋肉をつなぐ役割をしており、腱膜はその腱を包む膜のことです。
SMASはほとんどの部分で明確な平面状をしています。上方は側頭頭頂腱膜と僧帽腱膜に、下方は広頚筋の下側(下顎下縁の下側)に続いています。顔面側の領域は頬骨弓下側付近より明確な面状ではなく不明瞭になります。
配置は顔面の外側からでは、皮膚(表皮・真皮)、皮下脂肪(浅層脂肪)、SMAS、表情筋、深層脂肪、骨の順となります。SMASの厚さは耳下腺下部で最も厚くなり、顔の表面からの深さは耳前部で4.5mm程度といわれています。
SMASは骨とは接しておらず、垂直線維(線維性隔壁)を介して真皮とつながっています。このSMASと真皮をつなぐ垂直線維は支持靭帯の一種であり、脂肪隔壁やfalse retaining ligament(偽性支持靭帯)などと称されることがあります。SMASと真皮の間には皮下脂肪(浅層脂肪、superficial fat compartment)が配置され垂直線維(脂肪隔壁)によって皮下脂肪の配置が保持されています。
SMASはいくつかの表情筋膜と融合しています。つまりSMASと筋膜の融合は顔の筋肉(表情筋)と皮膚がつながることを意味しており、これにより人は表情を作ることができます。また、SMASは耳下腺と接しており耳下腺被膜の表層としっかりと結合しています。
SMAS説明文の解説
SMASは膜ではありません。筋肉でもありません。主に膠原線維(コラーゲン)でできている線維組織や表情筋膜、腱膜、耳下腺筋膜などで構成されている平面状の結合組織です。SMASの英語での説明ではplane(平面、水平面)という単語が用いられています。結合組織は、人の身体において組織と組織をつなぐ役割をしています。
SMASの皮膚側の面は支持靭帯で真皮とつながり、皮下脂肪と接しています。また、SMASから真皮に伸びる支持靱帯により皮下脂肪は区分されその配置が保持されています。SMASの骨側の面では骨とは接しておらず、表情筋膜や耳下腺筋膜、僧帽腱膜と融合しています。つまり、SMASには顔の皮膚や皮下脂肪、表情筋を支え、あるべき位置に固定する役割があります。
ほとんどの部分で明確な平面状をしていますが、顔の頬骨の下側から顔面中央に向かうにつれてその存在が不明瞭となります。SMASは頬のエラ部分付近が最も厚く、存在する深さは4.5mm程度といわれており、これがHIFU治療で4.5mmカートリッジが用いられる根拠であり、4.5mmカートリッジで両頬エラ部分を重点的に照射する理由です。
HIFU(以下、ハイフ)が発明されるまで、皮膚表面を傷つけずに皮膚表面から4.5mmの深さの組織に変化を与えることは不可能でした。ハイフが開発されるまでは、加齢によりSMASが緩むことで生じる顔のたるみを治療するには、皮膚を切開し徒手的にSMASを引っ張るフェイスリフト手術しかありませんでした。皮膚を切開したり、皮膚表面を傷つけることなく、皮膚表面から4.5mmの深さの組織を熱破壊、熱損傷させることができるハイフは、現在でも美容皮膚科領域で超画期的な治療機器であり続けています。
SMASの老化による変化
- 膠原線維の合成と分泌が低下し、弛緩する
- 脂肪組織、支持靱帯、骨の老化による変化に大きく影響を受ける
3.年代ごとの顔のたるみの症状
顔がたるむ原因は、顔面を構成している皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化が同時並行して進行することで、容姿に現れてきます。下の表は、年代別に生じる顔のたるみの症状をまとめたものです。
年齢 | 顔のたるみの症状 | 主な原因※ |
20代後半 | 両頬の毛穴が目立ち始める 肌のハリと弾力が低下する 目の周りの小じわが気になり始める |
皮膚の老化 |
30代 | 頬の位置が下がってくる ほうれい線が気になり始める 目の下や頬の凹みが気になり始める 目の周り、口周りのシワが目立ち始める |
皮膚・筋肉(表情筋)・支持靭帯の老化 |
40代 | 頬の位置が下がってくる ほうれい線が気になり始める 目の下や頬の凹みが気になり始める 目の周り、口周りのシワが目立ち始める |
皮膚・筋肉(表情筋)・支持靭帯・骨の老化 |
50代 | 口周りのたるみが顕著になる ほうれい線が深くなる フェイスラインがさがり顔の形が四角になってくる 二重あごになる(あごに肉付きがよくなる) 額やこめかみ、頬がやせる |
皮膚・筋肉(表情筋)・支持靭帯・脂肪組織、骨の老化 |
60代以降 | 50代のたるみの症状がさらに進行する 両頬が垂れ下がる あごと首の境界がはっきりしなくなる |
50代の原因がさらに進行するため |
※実際には全ての年代で皮膚、筋肉(表情筋)、脂肪組織、支持靭帯、骨の老化の全てが少なからず影響しています。
4.山手皮膚科クリニックの顔のたるみ治療
山手皮膚科クリニックでは、患者様ごとの顔のたるみの原因に確実にアプローチする最適な治療をご提案します。
顔面を構成するもの | 顔のたるみの症状 | 治療法※複数記載 |
皮膚 | はりがなくなる 小じわが増える 乾燥する 毛穴が目立つ |
ポテンツァニードルRF ポテンツァダイヤモンドチップ デンシティ 1540フラクショナルレーザー プロファイロ |
筋肉(表情筋) | 顔の形が変わる 口周りの症状 瞼が垂れ下がってくる |
ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ) ボトックス注射 ヒアルロン酸注入 |
脂肪組織 | ほうれい線 目の下のくぼみ フェイスラインがぼやける |
ヒアルロン酸注入 スレッドリフト ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ) 脂肪溶解注射 プロファイロ デンシティ |
支持靭帯 | 頬が垂れ下がってくる 目の下が垂れ下がってくる 瞼の開閉がしづらく感じる |
ヒアルロン酸注入 |
骨 | 顔の形が変わる 顎の症状 額・こめかみのやせ |
ヒアルロン酸注入 |
年齢 | 顔のたるみの症状 | 治療法※複数記載 |
20代後半 | 両頬の毛穴が目立ち始める 肌のハリと弾力が低下する 目の周りの小じわが気になり始める |
ポテンツァニードルRF ポテンツァダイヤモンドチップ 1540フラクショナルレーザー |
30代 | 頬の位置が下がってくる ほうれい線が気になり始める 目の下や頬の凹みが気になり始める 目の周り、口周りのシワが目立ち始める |
ヒアルロン酸注入 ボトックス注射 ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ) ダイヤモンドハイフ ポテンツァニードルRF+マックームまたはジュベルック デンシティ |
40代 | 頬の位置が下がってくる ほうれい線が気になり始める 目の下や頬の凹みが気になり始める 目の周り、口周りのシワが目立ち始める |
ヒアルロン酸注入 スレッドリフト ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ) ダイヤモンドハイフ デンシティ |
50代 | 口周りのたるみが顕著になる ほうれい線が深くなる フェイスラインがさがり顔の形が四角になってくる 二重あごになる(あごに肉付きがよくなる) 額やこめかみ、頬がやせる |
ヒアルロン酸注入 スレッドリフト ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ) 脂肪溶解注射 デンシティ ポテンツァニードルRF+マックームまたはジュベルック プロファイロ |
60代以降 | 50代のたるみの症状がさらに進行する 両頬が垂れ下がる あごと首の境界がはっきりしなくなる |
看護師施術
- ウルトラフォーマーMPT(医療ハイフ)
- ポテンツァ ダイヤモンドチップ
- ポテンツァ ニードルRF
- ダイヤモンドハイフ
- デンシティ※記事作成中
- 1540フラクショナルレーザー
医師施術
5.山手皮膚科クリニックの顔のたるみ治療方針
- 医師が「顔のたるみ」の症状を診察します
- 患者様が「気になるたるみ症状」「どのようになりたいか」をお伺いします
- 「流行りのこの治療を受けてみたい」というご希望に応えます
- 医療ハイフやスレッドリフトなどに関しては、明らかに適応のない方にはおすすめしないこともあります
顔のたるみの症状は、進行を止めることができません。50歳の方の萎縮した表情筋や骨を、20代のころに戻す再生医療はいまだありません。顔のたるみ治療は、予算を決めて、その年代だから生じてしまう顔のたるみの原因に対してピンポイントにおこなう医師の治療(ヒアルロン酸やスレッドリフトなど)と、たるみの進行を抑制したり、肌をきれいに見せることで見た目を若々しく見せる機器を用いた看護師の治療(医療ハイフやデンシティ、ポテンツァなど)を定期的に受けることで、きれいに年齢を重ねていくことができるのです。
山手皮膚科クリニック院長の豊福一朋です。 私は開業医になるまで、日本、カナダ、米国でメラニンの研究をおこなってきました。メラニンやシミの専門家である私は皆様のお顔から、老人性色素斑、そばかす、脂漏性角化症などのシミを“消しゴムで消すように”無くすことができます。加えて、20年前からさまざまなレーザー機器を扱ってきましたので、レーザー治療は私の得意分野です。このような経緯から、当院、山手皮膚科クリニックにはシミ・そばかす・脂漏性角化症のレーザー治療および多発したイボのレーザー治療を求めて全国から患者様がいらっしゃいます。
そんな私ですが、実は顔のたるみ治療にも力を入れています。 「じつは山手皮膚科クリニックは顔のたるみ治療もやっている!!」というお話しを聞いていだけませんでしょうか。
私がおこなうレーザー治療では、お顔のシミ、多発したイボはほとんどの場合、1回の治療で取り去ることができます。シミのないお顔、イボがなくなりツルツルのお顔になると、皆様は鏡を見て別のことに気づきます。加齢に伴うシワやたるみです。 「このシワ、たるみ、どうにかなりませんか?」というのが私への次なるご要望でした。そして、顔のたるみは中年であった私自身にとっても切実な問題でした。 私は自分をどうにかしたいという気持ちもさることながら、シミやイボ治療を終えた患者様が綺麗でいたいという気持ちに応えたいと思いました。20年前からコラーゲン注入治療の勉強をはじめました。注入療法は時代とともにコラーゲンからより効果が高いヒアルロン酸注入へと変わっていきましたが、注入療法の権威の先生方に師事して技術の習得をしてきました。ヒアルロン酸注入はまだ歴史が新しく、注入方法が年々改良されています。常にアップデートされるヒアルロン酸注入の手技に加えて、ボトックス、プロファイロ、スレッドリフトなどの技術も習得しています。
しかしながら、これら医師の手技のみでは、顔のたるみ治療は十分ではありません。高周波、超音波、光治療器、レーザーといった機器による治療の組み合わせは治療効果を格段に高めます。機器での治療は看護師が担当します。治療機器の操作を医師でなく高い技量をもった看護師がおこなうことで、リーズナブルな価格で高い治療効果をだすことができるようになります。 当院は2023年11月に十分な広さを持つ現在地に移転しました。部屋が増えて、たるみ治療では、高周波治療器である「ポテンツァ」、「デンシティ」、HIFU(ハイフ)の「ウルトラフォーマーMPT」の3つを導入して治療を開始しています。いずれも最新機器となります。
「じつは山手皮膚科クリニックは顔のたるみ治療もやっている!!」というお話しさせていただきました。顔のたるみ治療では、医師の技量、看護師の技術、治療機器の性能の3つすべてがそろって確実な効果を発揮します。顔のたるみをどうにかしたいと思っていらっしゃる皆様、山手皮膚科クリニックで「顔のたるみのカウンセリング」をお受けになりませんか。スタッフ一同、皆様のご来院をお待ちしています。 ※山手皮膚科クリニックには、美容皮膚科や美容外科にいる医師でも看護師でもない「(無資格者の)カウセラー」がいません。皆様のお悩みには、最初から院長の豊福が向き合い、皆様ひとりひとりで異なる顔のたるみの原因をわかりやすく説明して、必要な治療のみをご提案させていただきます。 |
6.予算ごとの治療例
治療の組み合わせ例として、税込予算10万円以内、20万円以内、30万円以内でどのような治療ができるかをまとめてみました。
■10万円(税込)以内 例1)ダイヤモンドハイフ49,500円+脂肪溶解注射16,500円(ダイヤモンドハイフと同日の場合)=66,000円 例2)ウルトラフォーマーMPT二重あご22,000円+デンシティ77,000円=99,000円 例3) ヒアルロン酸1本 77,000円+ボトックス注射(口角)11,000円=88,000円 |
■20万円(税込)以内 例1)ダイヤモンドハイフ49,500円+デンシティ77,000円=126,500円 例2)ヒアルロン酸2本127,600円+ダイヤモンドハイフ49,500円=177,100円 例3)1540フラクショナルレーザー5回プラン 176,000円 |
■30万円(税込)以内 例1)スレッドリフト10本165,000円+ヒアルロン酸2本127,600円=292,600円 例2)ダイヤモンドハイフ49,500円+デンシティ77,000円+ヒアルロン酸2本127,600円=254,100円 例3)ダイヤモンドハイフ49,500円+ウルトラフォーマーMPT二重あご22,000円+脂肪溶解注射16,500円(ダイヤモンドハイフと同日の場合)×2回+ヒアルロン酸2本127,600円+ボトックス注射(顎)16,500円=248,600円 |
「顔のたるみ」は進行性の加齢変化であるため、美容医療を受けたからといって顔がたるまなくなるわけではありません。実は、美容医療の効果は「美容医療を受けたことによる見た目の変化」だけではありません。「人生で美容医療を受けた場合と受けなかった場合とでは、未来の見た目年齢の若さ」が変わります。
7.治療のながれ
カウンセリング予約
- 予約サイトからカウンセリングのご予約をお取りください。「エイジングケア・美肌治療 カウンセリング・経過診察の予約」→「顔のたるみ、ほうれい線」を選択してください。
- 保険適用外の自費診療となります。
- 診察料金は、当院で自費診療のご相談が初めての方は自費初診料3,300円、ご相談歴がある方は自費再診料1,650円です。
カウンセリング
問診
- 具体的に気になるたるみの症状を教えていただきます。
- 受けてみたい治療があれば教えていただきます。
- ご予約時にご回答いただいたWEB問診の内容をさらに詳しくお聞きいたします。
触診
- お顔全体を触らせていただきます。
- 顔面骨の状態、脂肪組織のボリュームと配置を確認いたします。
説明
- 患者様が気になっている顔のたるみの症状の原因を説明いたします。
- 患者様の顔のたるみの原因に合った治療をご提案いたします。
治療の予約
カウンセリング時にご提案させていただいた治療のご予約は、予約サイトからお取りいただけます。
8.顔のたるみのよくある質問
答えは質問をクリックすると表示されます。
Q1. 頬や顔のたるみを予防するためにはどんなケアが効果的ですか?
日常の姿勢とたるみの関係
たるみの原因の1つは脂肪組織の下垂(位置の移動)です。木の枝になったリンゴのように、脂肪組織は重力で下に落ちようとしています。それを落ちないように支えているのは真皮と支持靭帯です。パソコンでの仕事などのデスクワークで下を向いて仕事をしている、スマートフォンで長時間画面を見ることが習慣になっているなど、顔が常に下を向くのはたるみの原因になります。真皮と脂肪組織は重力で下方へ移動しようとしています。真皮は自身の弾力性で重力に対抗しつつ、脂肪組織の下垂も防いでいます。支持靭帯は脂肪の組織の中に枝を張ったように入り込み、脂肪組織を支えて、重力で下垂しないようにしています。しかし、下を向く姿勢が長く続くと、重力に負けて真皮や支持靭帯の弾力性が損なわれ、脂肪組織と真皮とともに皮膚は下垂します。喫煙、偏った食事が組み合わさると、皮膚の老化が早まりたるみが加速する可能性があります。姿勢には気を付けましょう
食生活の影響
美肌に役立つ代表的な栄養素としては、肌や筋肉をつくるタンパク質と、肌をダメージと老化から守る抗酸化ビタミン(ビタミンA・E・C)があります。意識的に摂取したいものの、これらの栄養素のみを摂ればよいという訳ではありません。プロテインなどの栄養補助食品も活用しつつ、栄養バランスを大切にしましょう。
喫煙
喫煙はたるみを加速します。喫煙は皮膚にいろいろな悪影響をおよぼします。以下のような作用があります。
- 活性酸素を発生. 喫煙で生じる煙は体内に大量の活性酸素をつくります。活性酸素は皮膚だけでなく全身の老化を促進します。
- コラーゲンの生成を抑制:その結果、真皮の弾力性を低下させる。
- ビタミンCを破壊. ビタミンCはコラーゲン生成に必須のビタミンです。ビタミンCが減ると真皮でのコラーゲン産生に支障をきたします。また、紫外線、喫煙、ストレスにより体内に発生する活性酸素を中和して無毒化します。
- 血管収縮作用による血行の悪化. 皮膚表面の毛細血管が収縮して栄養が行き渡らなくなり、老廃物も貯まるなど、悪影響を及ぼします。
- 女性ホルモンの代謝を阻害し分泌が低下;皮膚の生理機能に重要な役割を果たすエストロゲンが減ると真皮の線維芽細胞の機能を低下させて真皮のコラーゲン産生が低下します。
紫外線
紫外線の中で波長が長いUVAは真皮深層まで到達して、細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質)を変性劣化させます。紫外線対策はたるみ対策で重要です。日焼け止め、日傘、帽子などで徹底的に紫外線を防ぎましょう。紫外線は真皮で活性酸素を発生させて老化を促進します。ビタミンCやポリフェノールを含んだ食品を摂取することも対策になります。
Q2. 顔のたるみを改善するためにマッサージは効果的ですか?
マッサージが医学的にたるみ改善につながる根拠はないようです。
しかし、最近では毛に付着する立毛筋の方向にマッサージすると、たるみ防止の効果があると言われています。
資生堂の研究では、顔の皮膚に存在する毛包に付着する立毛筋を活性化することがたるみの改善に繋がる可能性があるとしています。
Q3. 顔のたるみを解消するためにはどんな食事がおすすめですか?
皮膚の構成成分を摂る
コラーゲン
真皮の弾力性を保つのはコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質です。これらは細胞外マトリクスといいます。このなかでコラーゲンを多く含んだ食品を摂ることは、たるみへの対抗となります。コラーゲンを多く含んでいる食品としては、手羽先、鶏軟骨、牛すじ、豚足、フカヒレなどがあります。しかし、毎日このような食品を摂るのも大変です。私はコラーゲンのサプリメントを取るのは良い方法と思います。サプリメントにはコラーゲンの合成をサポートするビタミンC、鉄分が含まれているものがあります。
老化に対抗する抗加齢食品を摂る
ビタミン
たるみの理由に紫外線やブルーライトによる光老化ががあります。とくに紫外線は真皮に到達して活性酸素を発生します。活性酸素は真皮の細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの基質)を劣化変性させます。
ビタミンA・E・Cは抗酸化ビタミンと呼ばれ、活性酸素を中和します。
ポリフェノール
ポリフェノールとは、ほとんどの植物に存在する苦味や色素の成分です。ポリフェノールは抗酸化作用が高く、有害な活性酸素を無毒化します。
代表的なポリフェノールを示します。()内は各ポリフェノールを多く含む食品です。これらの一部はサプリメントして摂取することもできます。
- アントシアニン (赤ワイン、ブルーベリー、カシス、ブドウ、赤ジソ、紫キャベツ、なす)
- カテキン (緑茶、紅茶)
カカオポリフェノール (ココア、チョコレート)
ルチン (韃靼そば、かんきつ類、アスパラガス、トマト、ほうれんそう、ブロッコリー、ケール、ナス、タマネギ、レバー)
フェルラ酸 (コメ、大豆、小麦、コメぬか)
コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸) (コーヒー)
クルクミン (ターメリック)
ショウガオール (生姜)
肌によくない食物(高脂肪食、アルコール、糖質の取りすぎ)を避ける
食品の摂取でも活性酸素をつくりだすことをご存じですか。高脂肪食、アルコール、糖質の取りすぎは体内の活性酸素をふやし、老化をすすめます。抗加齢医学では有名な実験があります。アカゲザルを2つのグループに分けて、一方のグループに食事(カロリー)制限を20年間おこなった研究です。結果はカロリー制限をおこなったグループでは加齢を遅らせることができ、延命効果を高めたというものです。またラットも用いたカロリー制限の実験では、通常の食事を与えられたグループでは加齢により毛並が悪くなるのに、カロリー制限食のグループで毛並みがよくなっています。これらは、我々人間にも当てはまると言われています。食べ過ぎず、腹八分目の食事というのは抗加齢効果があり、たるみ防止にも役立つはずです。
Q4. 化粧品では顔のたるみが改善されないのはなぜですか?
化粧品はたるみの改善をうたった化粧品があります。化粧品は薬事法で角層までしか浸透しないことになっています。しかし、実際は真皮までは成分が到達していると思います。たとえば、ビタミンC誘導体は真皮まで到達してコラーゲンの産生を促進し、真皮の弾力性を回復します。化粧品でも成分によっては真皮まで到達してたるみに対する効果を発揮しているのです。しかし、たるみの改善には化粧品だけでは不十分です。たるみは真皮、支持靭帯、SMAS、骨の変化が複合して起こります。「同時多発テロ」ならぬ「同時多発加齢変化」とも言えます。化粧品の成分が真皮まで到達しても、その下の浸透するのは真皮までで支持靭帯、SMASまでは届きません。