更新日:2021.10.31/公開日:2017.3.7
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
肝斑
1.肝斑の定義・症状・原因
肝斑の定義・症状
肝斑は女性の顔面にできる左右対称性シミです。30~50代の女性の顔面、とくに頬骨部、前額、鼻下に左右対称に出現します。色素斑は境界が比較的明瞭で均一な褐色調です。目の周囲が抜けるのが特徴です。
肝斑は両側性にできる色素斑であるソバカス(雀卵斑)や遅発性真皮メラノーシス(ADM)と区別がつきにく場合があります。また、シミ、ソバカス、ADMと同時に存在する場合もあります。
一般に以下の特徴があります。
- 30歳前後からおこる両側性の色素斑で、頬骨部、前額、鼻下に好発する。
- 褐色で比較的均一なびまん性の色素斑である。網目状になってい場合もある。
- 症状に季節的変動があり、夏季に増悪する。
- 女性に多い
- 目の周囲、髪の生え際、眉毛部には色素斑がない。
- 70~80歳以降になり、化粧をしなくなる年齢から軽快する傾向にある。

典型的な肝斑: 両側頬部の肝斑は目の周囲を避けて存在しています。 典型的な肝斑:目の周囲に色素斑がないのが肝斑の特徴です。鼻下に”ひげ”のような形の色素斑も肝斑です。

頬部全体にひろがる網目状の肝斑
肝斑の原因
肝斑の原因はわかっていません。
教科書には以下のように記載されていることが多いです。
1)経口避妊薬でも出現しやすく、高齢になると自然に消失することから、女性ホルモンの分泌と深い関係がある。
2)多くは妊娠をきっかけに出現する。
3)紫外線の多くなる夏に目立つようになり、冬には薄くなることが多く、紫外線が増悪要因となる。
4)睡眠不足、ストレスでも悪化することがある。
しかし、実態に肝斑の人を診察していると、1)、2)、4)は必ずしも肝斑と関係が深いとはいえないことに気づきます。
私は皮膚科になって30年以上肝斑を含むシミを診察していて、肝斑の人にはある傾向があることに気づきました。それは、「皮膚を擦りすぎている」ということです。肝斑は女性に多く、化粧をする年代から出現します。女性は20歳はじめから化粧をするひとも多いですが、念入りに化粧をするようになるのは30歳前後です。肝斑の好発年齢と一致します。化粧品の種類・品目が増え、念入りに化粧をすれば、自然に肌を擦るようになります。 とくに頬骨部、前額、鼻下は皮下の脂肪組織が少ない場所で、直下に骨があり、皮膚の可動性が悪い部位です。化粧することで過剰な摩擦が加わることになり、結果として「擦りすぎによる皮膚のバリア破壊」がおこります。皮膚のバリア破壊により、皮膚には慢性に炎症が続き表皮にメラニンが増加して色素が濃くなり肝斑となります。肝斑は摩擦により表皮におこる「炎症後色素沈着」といえます。さらに肝斑を隠そうと念入りに化粧することで、慢性の炎症は遷延しさらに表皮のメラニン量が増え肝斑が濃くなったりすると考えています。当院は新宿区にあるので、アジア系の方が多く住んでいらっしゃいます。東南アジアのある地域(国)から日本に来られた方には、とても濃い肝斑が多くみられます。生活状況をお聞きしたところ、この地域(国)では洗顔時に強く肌を擦るということがわかりました。洗顔をやさしくすることで、肝斑は改善しました。洗顔指導をしたことで肝斑が薄くなることは、肝斑と「擦りすぎによる皮膚のバリア破壊」が関連していると確信させてくれます。肝斑のある方では、顔を擦る傾向があるので、肝斑以外の部分にも摩擦により色素沈着がおきていることが多いのも特徴です。
ほか、紫外線の影響は強いと思います、とくに頬骨部は紫外線の暴露が多い部分です。紫外線が肝斑の増悪因子であることは間違えなさそうです。
私は肝斑の原因を以下のように考えます。
- 洗顔、化粧時に顔を摩擦することでおきる「擦りすぎによる皮膚のバリア破壊」の結果出現する「炎症後色素沈着」である。
- 紫外線は確実な増悪要因である。
2.肝斑の鑑別診断
肝斑は頬部(特に頬骨部)にできる両側性の色素斑です。頬骨部に両側性、対称性にできる色素斑には肝斑の他に、後天性真皮メラノーシス(ADM)、ソバカス、老人性色素斑があります。それぞれ治療方法が違います。確実な診断をつけるのは重要です。
1)後天性真皮メラノーシス(ADM)
別名:遅発性両側性太田母斑様色素斑
遅発性両側性大田母斑様色素斑は20~40歳ころから両側性に出現する色素斑で肝斑と区別しにくい場合があります。目の周囲(眼輪筋の内側)にまで存在し、時に眼球結膜(白目の部分)にも色素斑があることがあります。境界が明瞭でないことも遅発性両側性大田母斑様色素斑の特徴です。色調は肝斑の茶褐色と違い典型的な遅発性両側性大田母斑様色素斑は灰青色ですが、区別が困難な場合が多いです。
色調はまだら模様でこれも色素が均一な肝斑と違うところです。

ADMの臨床像 両側性に色素斑が存在するADMは肝斑と似ています。

ADMの臨床像 目の周囲にも色素斑が存在しています。
2)シミ・ソバカスとの区別のしかた
シミ・ソバカスは鉛筆で囲めるような小さな色素斑(黄色で囲んだ部分)です。
一方、肝斑はべたっと均一な色素斑で範囲が大きく、鉛筆で囲もうとしても一部で境界不明瞭な部分があり、きれいに囲めません(赤色で囲んだ部分)。
3.肝斑の一般治療
一般には、トラネキサム酸の内服、ハイドロキノン、トレチノインなどの外用が使用されます。
ここ数年はレーザートーニングが肝斑のレーザー治療として流行しているようですが、私は効果がないと考えています。以下のような問題点があります。
レーザートーニングの問題点
肝斑は摩擦による炎症後色素沈着なので、表皮にはメラニンが増加しています。レーザートーニングをおこなうとメラニンが多く含まれている肝斑の表皮は除去され、一時的に肝斑は消失します。しかし、その後、レーザーにより炎症後色素沈着がおこり、元の状態に戻ります。レーザートーニングでは、治療間隔を2~3週間に設定して、炎症後色素沈着がおきてきたころに次の照射をおこないます。それで、レーザートーニングを継続している間は肝斑がよくなったように感じるのです。したがって、レーザートーニングを止めてしまうと、肝斑は再発することになります。レーザートーニングでもっとも問題になるのは色素脱失です。レーザーを繰り返し照射することで、表皮のメラノサイトは破壊されていきます。繰り返すことで色が抜けていくのです。いったんまだら状に色が抜けてしまうとメラノサイトは再生せず、元に戻らないことがあります。レーザートーニングを繰り返しおこなった方にはよくみられる症状です。

肝斑にレーザートーニングを繰り返して頬骨部に出現したまだら状の色素脱失。いったんおこると元に戻らないことがあります。
4.山手皮フ科クリニックの肝斑治療方針
1.顔の摩擦を避ける
顔の摩擦を与えることは肝斑の原因になります。
以下のことに気をつけてください。
肌につける美容液や化粧品の品数を減らしください。品数を減らすことで顔への摩擦を減らせます。
洗顔時優しく顔を触ってください。シャワー時に顔の直接シャワーをかけないでください。パックは使用しないでください。
2.サンスクリーン剤(日焼け止め)を使う
サンスクリーンはファンデーションに日焼け止めが入っているものでは不十分です。日焼け止め単剤を使用してください。
3.フォトフェイシャルM22+スキンケア指導
肝斑のある方では、肝斑以外の部分にも摩擦により色素沈着がおきています。フォトフェイシャルM22で光治療(IPL)を1~2回おこない、顔全体の美白をおこないます。通常、光治療(IPL)を肝斑に照射すると症状が悪化することがあります。フォトフェイシャルM22はフィルターを使用して照射する光の波長を選択することで、肝斑を悪化させることなく、顔全体の美白・美肌に効果をもたらします。初回にはナースがスキンケア指導を合わせておこないます。
※肌のトーンが濃い方はフォトフェイシャルM22が使用できない場合があります。
4.内服療法
トラネキサム酸(250mg錠)を内服します。
5.治療例

治療前

治療後
5.肝斑治療のながれ
①初診・初回相談・再相談
- 肝斑治療をご希望の方は、先ず『院長外来』の診察にご来院いただいております。診察時に診断と治療方法の説明をおこないます。
- 肝斑治療のご相談は、自費診療です。自費診察料金は1,650円(税込)です。
- 前回相談日ならびに前回レーザー治療から1年以上経過している方は、再度診察(再相談)が必要です。
- 当院は方針として、診察と治療は同時に行っておりません。治療までに2回のご来院が必要です。
- 『院長外来』はWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリニック受付ならびにお電話では『院長外来』の予約の受付はいたしておりません。
②治療
- 初診・初回相談・再相談の後に治療が可能となります。
- 治療は自費診療です。フォトフェイシャルM22の施術は看護師が行います。
- フォトフェイシャルM22は完全予約制です。ご予約はクリニック窓口、お電話で承ります。2回目以降からはLINEでのご予約もご利用いただけます。
- 初回治療の受付時に署名済みの説明同意書をご提出いただきます。※2回目以降の治療の方、前回治療と治療方法、治療後の処置が変更のない方は不要です。
初回治療
初回治療はフォトフェイシャルM22によるIPL治療とスキンケア指導をおこないます。同時にトラネキサム酸内服を開始します(2か月間)
2回目治療
初回治療から2か月あけてから2回目のフォトフェイシャルM22によるIPL治療をおこないます。
メンテナンス
2回目治療からは2~4か月あけてメンテナンスのフォトフェイシャルM22によるIPL治療をおこないます。
肝斑治療料金
基本治療料金
初回治療 | 2回目治療 | メンテナンス | |
フォトフェイシャルM22 | ¥25,300 | ¥25,300 | ¥25,300 |
トラネキサム酸内服(2か月) | ¥2,460 | – | 症状により処方 |
こちらをご覧ください。