更新日:2021.4.17/公開日:2017.2.27
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
現在、太田母斑・ADMの新規ご相談、再相談の受付を停止しております。受付再開は2023年7月頃を予定しております。
2023年7月以降は太田母斑・ADMの診察ならびにレーザー治療は副院長の新井医師が担当する予定です。
太田母斑・後天性真皮メラノーシス(ADM)
太田母斑・後天性真皮メラノーシス(ADM)は顔の「青アザ」、「茶アザ」です。Qスイッチレーザーでのみ治療が可能です。レーザー治療は保険適用となっています。
典型的な太田母斑は皮膚科の専門医であれば診断は簡単ですが、軽症の場合は診断が難しく、専門医であってもシミ、ソバカス、肝斑と診断して美白剤の外用、光治療(IPL)、レーザートーニングをおこなっていることがよく見受けられます。これらの治療で太田母斑、ADMが薄くなることはありません。
レーザー治療に際しては、麻酔注射剤、麻酔クリームなど十分な麻酔を使用し、眼球保護用のコンタクシェルを用いることが重要です。眼球保護用のコンタクシェルを使用せずに視力に障害が出た例が報告されています。
太田母斑
定義・概念
太田母斑は、主に顔面三叉神経領域第1枝および第2枝の支配領域(額~上下眼瞼・こめかみ・鼻~頬部)に出現する褐青色の色素沈着です。

太田母斑は片側のみに存在、両側にある場合もいずれが片側に色調が強いのが特徴です。
疫学
日本人における発生頻度は高く、人口の1000人に1~2人程度だと言われています。太田母斑での受診者の男女比は1:4~5で女性に多いです。
出生時または1歳未満から認められるケースが約半数で、多くは思春期までに発症します。30歳以降に出現することは稀です。
病因・病態生理
真皮の上層から中層にメラノサイト(色素細胞)が存在します。通常は真皮にはメラノサイトは存在しません。また、表皮の下側(基底層)にもメラニンが増加しています。真皮のメラノサイトがつくったメラニンと表皮基底層で増加したメラニンが太田母斑の色調をつくります。

太田母斑の病理組織像(200倍) 真皮にメラノサイトが存在してメラニンを産生しています。真皮は本来メラノサイトが存在しない場所です。また、表皮にも褐色のメラニンが増えていて、これらが太田母斑の色調をつくっています。
臨床症状
額~上下眼瞼・こめかみ・鼻~頬部のすべて、あるいは一部に点状の褐色斑と斑状の青色斑がみられます。半数では眼にも症状があり、強膜(白眼)、虹彩、眼底にも色素沈着を認めます。鼓膜、鼻粘膜、咽頭、口蓋にも色素斑が出現することがあります。「診断・鑑別診断」に示すようにいろいろなバリエーションがあります。

太田母斑は片側のみに存在することが多く、眼球の強膜(白眼)に色素斑があることがあります。
診断・鑑別診断
色調が濃い典型的な太田母斑であれば、部位と色調から皮膚科専門医であれば診断は容易です。色素斑の存在する範囲が小さい場合は診断が難しく、老人性色素斑、ソバカスと間違って診断されることがあります。
鑑別診断:肝斑、ソバカス、老人性色素斑

鼻孔の色素斑は太田母斑に特徴的です。頬部の色素斑が太田母斑かどうか不明な時、鼻孔に色素斑があることで太田母斑の診断が確定することがあります。

左頬部にわずかに存在する色素斑です。他院ではソバカスと診断されていました。光治療(IPL)を3回おこなったにもかわらず、当院を受診されました。ソバカスは通常両側性なので、このように片側のみに存在する場合、太田母斑だと診断できます。
治療
Qスイッチレーザーにて治療します。
後天性真皮メラノーシス(ADM)
同義語:後天性両側性太田母斑様色素斑
定義・概念
かっては遅発性で両側に出現する太田母斑の一部の考えられていました。それで「後天性両側性太田母斑様色素斑」という名がつきました。しかし、前述した典型的な太田母斑とは出現する年齢・分布が違います。現在は後天性真皮メラノーシス(Acuired dermal melanosis; ADM)(以下ADMと略します)と呼ばれています。

ADMでは色素斑が両側にあります。後天性両側性太田母斑様色素斑とも呼ばれます。
疫学
男女比は1:13と圧倒的に女性に多く、発症年齢は8歳から72歳までと様々です。多くは20歳代後半から30歳代半ばが多いとされています。
病因・病態生理
太田母斑と同じく、皮膚の真皮の上層から中層のメラノサイトが原因です。
臨床症状
出現部位は太田母斑と同じく顔面三叉神経領域第1枝および第2枝の支配領域(額~上下眼瞼・こめかみ・鼻~頬部)です。太田母斑と違って眼球強膜(白眼)、口腔内には色素斑が出ないとされています。
診断・鑑別診断
両側性の色素斑であることから肝斑、ソバカスと間違われていることがあります。肝斑としてトレチノインやハイドロキノンの外用療法、レーザートーニングがおこなわれていることがあります。また、ソバカスとしてIPL(光治療)が繰り返しおこなわれることが多くみられます。これらの治療をおこなっても効果がみられない場合は、ADMを考えるべきです。
症状が軽度で目の周囲のみに存在する場合、「目のクマ」と思わていることも少なくありません。美容外科で目の下にヒアルロン酸注入を受けている例がしばしばみられます。当然症状は改善しません。
無駄な時間とお金を使わないために、最初から確実な診断を受けることが重要です。以下に示すADMは初回診断が誤っていたため、不適切な治療がおこなわれたり、治療方法がないと言われていた例です。
鑑別診断:肝斑、ソバカス、目のクマ
ソバカス様のADM

一見ソバカスのように見えますが、ADMです。これまで他の美容皮膚科で10回以上IPL(光治療)がおこなわれましたが、症状が改善せず、当院を受診されました。
肝斑として治療されていたADM

頬部の色素斑です。他院で肝斑と診断され、トレチノインとハイドロキノンの外用療法をおこなわれていました。ADMなのでレーザー治療でのみ治療可能です。
目のクマにみえるADM

両側の目の周囲が青黒く、長年「目のクマ」と診断され、治療方法はないと言われていました。疲れと関係なく、朝起床時も夜も変わらない目のクマはADMのことがあります。レーザーで治療可能です。

両側にある色素斑です。美容外科で「目のクマ」と診断され、目の下にヒアルロン酸の注入を受けました。症状の改善はなく、その後の治療をあきらめていました。レーザーで治療可能なADMです。
治療
Qスイッチレーザーにて治療します。
レーザー治療
当院の真皮メラノーシス(太田母斑、ADM)のレーザー治療では、シネロン・キャンデラ社製のQスイッチアレキサンドライトレーザー(製品名『ALEXレーザー』)を使用します。Qスイッチアレキサンドライトレーザーを照射すると、真皮メラノーシスの色の原因である真皮に存在するメラノサイトにレーザー光が吸収され瞬時に熱エネルギーに変換されます。そこで発生した熱により真皮のメラノサイトが熱破壊されます。破壊された真皮メラノサイトでは、真皮メラノーシスの原因となるメラニンを産生することができなくなるため、真皮メラノーシスが消失する、または色が薄くなるといった治療効果が得られます。
真皮メラノーシスは、1回のレーザー治療で消失することはほとんどありません。4か月おきに繰り返しの治療が必要です。おおよその治療回数は2~5回です。治療効果は色素斑の種類、色調によって個人差があり、完全な色素消失に至らない場合もあります。

太田母斑、ADMの治療スケジュール
真皮メラノーシスは、1回のレーザー治療で消失することはほとんどありません。4か月おきに繰り返しの治療が必要です。おおよその治療回数は2~5回です。治療効果は色素斑の種類、色調によって個人差があり、完全な色素消失に至らない場合もあります
治療希望箇所に日焼け、肝斑、炎症後の色素沈着、レーザー治療後の色調の増強がある場合は、真皮メラノーシスのレーザー治療はお受けいただけません。これらの症状が改善してから治療可能となります。
色素脱失や瘢痕化など望ましくない反応が生じる可能性が高くなるため、同一箇所に対する治療は、他院でのレーザー治療歴も含め原則5回を限度としております。
レーザー治療のながれ
● 治療までに2回のご来院が必要です。当院は方針として、全てのレーザー治療、美容施術において初診での来院時に治療をおこなうことはありません。改めてご来院いただくこととしております。
● 過去に当院にて初診・初回相談または治療をお受けになられたことがある患者様において、初診または最終治療のいずれか直近の日付から1年を経過している場合、再度初診の診察から治療開始または治療再開となります。
初診・初回相談(来院1回目)・再相談
- 太田母斑・ADMのレーザー治療をご希望の方は、先ず『院長外来』の診察にご来院いただいております。診察時に診断と治療方法の説明をおこないます。
- 前回相談日ならびに前回レーザー治療から1年以上経過している方は、再度診察(再相談)が必要です。
- 当院は方針として、診察と治療は同時におこなっておりません。レーザー治療までに2回のご来院が必要です。
- 『院長外来』はWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリニック受付ならびにお電話では『院長外来』の予約の受付はいたしておりません。
- 必要時、診察前に洗顔または部分的な洗浄をお願いしております。範囲が狭い場合は、診察室でお化粧を拭き取らせて頂くことがあります。
- 当院では、個包装のメイク落とし、洗顔料、化粧水、乳液、日焼け止め、使い捨てタオルとヘアバンドをご用意しております。診察後にお化粧直しをご希望の場合は、患者様ご自身にてご用意願います。
- 診察・診断をおこない、医師が太田母斑・ADMの治療について説明いたします。
- 治療希望部位の面積を計測し、おおよその治療面積をお伝えいたします。※実際の治療面積は、治療時に確定します。
- レーザー治療を前提とした診察・相談・治療の実施について、患者様の年齢制限を設けております。ご相談及び施術ともに、満19歳以上の方を対象とさせていただきます。
治療(来院2回目)
- 初診・初回相談・再相談の後に治療が可能となります。
- 太田母斑・ADMのレーザー治療は、WEBからご予約をおとりいただく『WEB予約レーザー治療』の対象メニューです。クリニック受付ならびにお電話では『WEB予約レーザー治療』の予約の受付をいたしておりません。
- 保険での治療が可能です。治療は医師(院長)がおこないます。
レーザー治療
1.洗顔
日焼け止めやお化粧はメイク落としと洗顔フォームを使用して完全に落としていただきます。
2.麻酔
照射時は痛みがありますので麻酔を使用します。使用する麻酔は、治療部位および治療面積に応じます。
※テープ麻酔(ペンレステープ)は、照射30分~1時間前に貼付します。広範囲の治療の場合は、クリーム麻酔を使用します。クリーム麻酔では、麻酔塗布後30分ほど院内で待機していただきます。注射麻酔(局所麻酔)は、眼瞼周囲および広範囲で色調が濃い場合に使用します。注射麻酔では、注射範囲に内出血が生じます。内出血斑は2週間ほどかけて消退します。
3.眼球保護
専用のゴーグルを装着します。
※眼瞼周囲の治療の場合、特殊な医療用コンタクトシェルを使用します。コンタクトシェルの装着は、麻酔点眼薬の点眼後に医師が行います。治療前に普段使用しているコンタクトレンズは外していただきますので、当日は眼鏡でご来院されるか、コンタクト保存容器と保存液をご持参ください。院内にて購入することも可能です(税込370円)。

眼の周囲の太田母斑、ADMを治療する場合、滅菌した眼球保護用コンタクトシェルを使用して眼をレーザー光から保護します。
4.レーザー照射
レーザー照射時は、専用ゴーグルや医療用コンタクトを装着していても赤い光が見えます。
5.治療後の処置
抗炎症作用のある軟膏を塗布します。その後、アイスノンで10~20分冷却していただきます。ご自宅で冷やしていただく必要はありません。照射部には水疱や、軽度の出血がみられることがあります。
6.経過診察
初回治療後3か月目に経過診察にご来院いただきます。経過診察にご来院いただいていない場合、2回目以降のレーザー治療は行えません。経過診察は予約制ではありません。
太田母斑・ADMレーザー治療料金
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