更新日:2022.4.17/公開日:2017.3.8
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
イボは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV;human papillomavirus)が皮膚に感染してできます。
イボのウイルスは正常の健康な皮膚には感染できないのですが、小さな傷などがあるとそこから皮膚に入り込んでイボをつくります。
一般には外傷を受けることの多い手足や外陰部にできやすく、アトピー性皮膚炎の子供では特に引っ掻くことの多い肘・膝窩にもできます。
有病率は約1%、100人に1人はイボがあるといわれています。
若年ほど多く、米国の報告で15~24歳で1.5%という報告があります。
日本では外来患者の約5%という報告があります。
若年層では割合が高く6-10歳で23%、11~15歳で17%となります。
イボの治療
1)液体窒素による冷凍凝固(保険適用)
保険適用での標準治療です。
日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは推奨度A(おこなうように強く勧められる)の治療方法です。
液体窒素を浸した綿棒や液体窒素スプレーでイボを冷凍凝固します。
冷凍により皮膚に炎症が起こり、からだの免疫が活性化してイボを排除します。
1~2週間に1回の頻度で行います。
痛みを伴うのが欠点ですが、確実性があり最も良い方法です。
液体窒素をスプレーで噴出させて、イボを治療する方法もあります。
先端部の噴出口の直径を変えることができ、いろいろなタイプのイボを治療することができます。
顔や頚部に多発するイボでは、治療によりイボはなくなっても、液体窒素を浸す綿棒の形に色素沈着(炎症後色素沈着)をおこすことが多く、後述する炭酸ガスレーザーがよいことがあります。

綿棒に液体窒素を浸してイボを冷凍します。

液体窒素による治療の様子

液体窒素スプレー

液体窒素スプレー先端部 さまざまが形があり、イボの大きさ、深さで使い分けができます。

液体窒素スプレーでの治療の様子
液体窒素による冷凍凝固の料金
保険点数 | 自己負担額(30%の場合) | |
いぼ冷凍凝固法(3ヶ所以下) |
210点 | \630 |
いぼ冷凍凝固法(4ヶ所以上) |
260点 | \780 |
2)よく苡仁内服(保険適用)
よく苡仁は漢方薬でハトムギの種皮を除いた成熟種子を乾燥させて生薬です。
よく苡仁は漢方薬といってもハトムギですので毒性はゼロできわめて安全な薬です。
日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは推奨度B(おこなうように勧められる)の治療方法です。
全国市販後調査では627例中236例でイボ消失(有効率37.6%)、511例で改善の効果(改善率81.4%)となっています。
年齢別での有効率は別に調査になりますが、乳幼児で71%、学童74%、青年57%、成人20%と、若年で有効率が高い一方、成人では低くなっています。
少ないケースですがよく苡仁を飲むだけでイボがおちる方がいらっしゃいます。
通常は液体窒素による冷凍凝固、ステリハイド液外用と併用して治療します。
錠剤と粉末があり、お子様、ご高齢の方も内服できます。
内服する量は成人で1日18錠、あるいは粉で3~6gです。
小児では用量調整で減量します。
※ハトムギは子宮を弛緩させる働きがあるので妊娠中は内服できません。
保険治療の流れ
初診
- WEBから診察当日の順番が予約できます。保険証をご持参のうえご来院ください。診断と治療の説明をいたします。
3)メスでの手術
※当院ではおこなっていません。ご参考にお読みください。
保険適用ですが、イボの治療ではメスで切除する手術は通常行いません。
日本皮膚科学会の治療ガイドラインでは推奨度C1(おこなうことを考慮してもよいが、治療効果に十分な根拠がない)の治療方法です。
イボはウイルス性の病気なので、メスで切ってもウイルスが傷に残っていれば再発するからです。
足底などで1つしかない古い硬くなったイボで、液体窒素でなかなか治らない時は手術をおこなったほうがよい場合があります。
4)ハサミで切る
※当院ではおこなっていません。ご参考にお読みください。
イボをハサミで切る方法があります。
この方法の利点は高周波メスやレーザーなどを用いなくても簡単におこなえることです。
欠点は隆起が少ないイボや小さいイボはハサミがかからないので治療できないことと、治療後に消えない傷痕(瘢痕)が残る場合があることです。
ハサミで切る方法だと小さいイボは残ってしまうので、それらのイボが増えてしばらくしたらもとの状態にもどるのでよい方法とはいえません。
傷が残りやすい方では、傷が盛り上がった瘢痕となり醜形をきたすことがあるので注意された方がよい治療法です。

ハサミでイボを切ったあとの肥厚した瘢痕 青い矢印がイボ、赤い矢印が傷痕(瘢痕)
上の写真は他院でイボをハサミで切った治療された方です。
ハサミではすべて治療することができず、残ったイボからまた数が増えていくことが予想されます。
残った瘢痕はイボよりも大きく、白く盛り上がった状態で将来も消えないことが心配されます。
5)炭酸ガスレーザー(保険適用外 自費診療)
顔面、頸部のイボへの液体窒素治療で炎症後色素沈着が起こるのが嫌な方、通院が大変なので1回ですべてイボを治療したい方には炭酸ガスレーザーが適しています。
※頸部はイボ以外にアクロコルドン、皮膚軟性線維腫というイボより一回り大きい皮膚腫瘤の好発部位です。
アクロコルドン、皮膚軟性線維腫の治療では1か所1か所の麻酔の注射をおこなってレーザーで蒸散させるので、治療法が違います。
多発するイボ治療の詳細は「顔・頸部(くび)・おなかの多発したイボ」の項目をごらん下さい。
治療例:
40歳台男性の頸部に多発するイボです。液体窒素で治療するための頻回の通院が面倒で1回ですべて治療したいのでレーザー治療を希望され来院されました。
治療回数1回、通院3回(通院期間1カ月)。総治療費¥36,720
治療のリスク 炎症後の痛み(消炎鎮痛剤の内服で対応), 治療後の皮膚の炎症(ステロイド外用剤で対応), 炎症後色素沈着(自然に軽快、気になるとときはハイドロキノンなどの美白剤で対応)
レーザー照射前
レーザー照射直後
レーザー照射後3カ月
炭酸ガスレーザーによるイボ治療の料金
1回あたりの個数 | 料金(税込) |
166個以下 | 55,000円 |
167個以上 | 1個330円×見積り個数 |
※顔、頸部、デコルテ、胸部、腹部、上背部、下背部、そけい部といった1つの区分に存在するすべてのイボを治療するときの費用になります。
個数指定、金額指定での治療はおこなっていませんので、あらかじめご了承ください。
※当院では全ての医師施術において、薬剤費や麻酔代を除く治療料金が55,000円を超える内容を予約で行うこととしています。
当院のイボのレーザー治療は、治療方法の特性上(クリーム麻酔を使用すること、部位単位での治療である、院内待機や医師の時間と部屋の確保が必要など)、治療個数の多少にかかわらず完全予約制で行います。
1回の治療において治療個数が166個以下の場合のレーザー料金は55,000円となります。
治療個数が167個以上の場合は、見積り個数×330円で算出された金額がレーザー料金となります。
いぼレーザー治療のながれ
● 治療希望部位に、他院での液体窒素や炭酸ガスレーザーによる治療後の炎症後色素沈着がある状態で当院のイボレーザー治療はお受けいただけません。炎症後の色素沈着が完全に消退してから治療可能となります。炎症後色素沈着の部分にイボが残存または存在し、そこにレーザーを照射すると局所的に色素沈着が生じたり色素脱失の恐れがあるためです。
● 歯科治療の麻酔や、手術、他の美容施術で使用した麻酔で、気分不快(めまい、息苦しくなる、吐き気などの症状)や皮膚のかゆみ、かぶれなどの症状が出たことがある方は、治療をお受けいただけない場合があります。治療をお受けいただけると判断した場合も、1回の治療範囲を限定しておこなっております。
● 初診(保険診療・WEB予約)+テスト照射⇒2)お見積り(後日・予約)と治療予約⇒3)治療(後日・予約)と治療までに3回のご来院が必要となります。
● 過去に当院にて初診・初回相談または治療をお受けになられたことがある患者様において、初診または最終治療のいずれか直近の日付から1年を経過している場合、再度初診の診察から治療開始または治療再開となります。
初診・初回相談(来院1回目)・再相談
- 多発するイボのレーザー治療をご希望の方は、先ず『院長外来』の診察にご来院いただいております。診察時に診断と治療方法の説明をおこないます。
- 前回相談日ならびに前回レーザー治療から1年以上経過している方は、再度診察(再相談)が必要です。
- 当院は方針として、診察と治療は同時におこなっておりません。レーザー治療までに3回のご来院が必要です。
- 『院長外来』はWEBからご予約をお取りいただく予約制です。クリニック受付ならびにお電話では『院長外来』の予約の受付はいたしておりません。
- 診察・診断をおこない、医師が多発するイボのレーザー治療について説明いたします。
- レーザー治療を前提とした診察・相談・治療の実施について、患者様の年齢制限を設けております。ご相談及び施術ともに、満19歳以上の方を対象とさせていただきます。