更新日:2020.5.5/公開日:2017.3.7
このコンテンツは山手皮フ科クリニック 院長 豊福一朋が100%オリジナルで書いています。
毛細血管拡張症・赤ら顔
毛細血管拡張症とは、皮膚の真皮の毛細血管が拡張したもので、血流が通常にくらべて増加した状態で皮膚が赤くなることをいいます。
正常な状態でも気温、緊張、飲酒によって皮膚の毛細血管は拡張して皮膚が赤くなりますが、治療が必要な毛細血管拡張は拡張した状態が元に戻らなくなった状態をいいます。
また、通常は赤みが薄くても、緊張などで過剰の赤くなるのも毛細血管の機能の異常といえます。
顔面の毛細血管拡張症(特に鼻周囲)は「酒さ(しゅさ)」、「脂漏性湿疹、脂漏性皮膚炎」、「アトピー性皮膚炎」として外用剤やビタミン剤で治療されてることが多いです。
顔の赤みが外用剤やビタミン剤で治療されているのによくならない、年齢が若いのに「酒さ」として治療されていて変化がない などといったときは毛細血管拡張症かもしれません。
酒さ(しゅさ)の詳細は「酒さ」の項目をごらん下さい。
毛細血管拡張症と赤ら顔には色素レーザーのVビームⅡが最も効果があります。
毛細血管拡張症・あから顔の症状
欧米では毛細血管拡張症は性状(症状)から以下の1)から4)の4型に分類されています
(Redisch and Pelzerの分類)。
この1)から4)の分類には日本では「赤ら顔」といわれる、「一本一本の血管が確認できない淡い発赤が常にあり、周囲の温度変化で赤みが増強したり減弱したりするタイプ」がありません。これを5)紅斑タイプと分類することもあります。
1)単純(線状)タイプ;simple(linear) type
2)樹の枝状タイプ;arborizing type
3)クモ状タイプ;spider type
4)丘疹タイプ;papular type
5)紅斑タイプ;erythematous type
1)単純(線状)タイプ;simple(linear) type
血管の直径や長さは様々で盛り上がりは無く、赤色や青色を示す枝分かれのない血管の拡張。老年の鼻や頬部に多くみられますが、若年でも認められます。写真は30歳台男性です。
2)樹の枝状タイプ;arborizing type
枝分かれを認める以外は単純(線状)タイプと同じです。写真は30歳代女性の前腕
3)クモ状タイプ;spider type
中心の血管から周囲360度にわたり枝をだします。上肢に多く、年齢は若く、出産をきっかけに出現することがあります。また心臓病、肝臓病に伴うことがあります。女性ホルモンであるエストロゲンとの関連がいわれています。
顔面、特に頬部では拍動性(心臓の鼓動とともに脈打つこと)がある場合があります。
4)丘疹タイプ;papular type
皮膚の表面からわずかに隆起した小さい紅色丘疹上の血管拡張です。斑点状で直径は1mmから大きいときは1cmほどになることもあります。単発、多発いずれもあり、躯幹(胸、腹、背中)にみられます。
5)紅斑タイプ;erythematous type
一本一本の血管が確認できない淡い発赤がずっとあるタイプです。鼻の周り、頬部にあるものは脂漏性湿疹として、鼻全体にあるものは酒さとして外用剤で治療されていることが多いのですが、効果はありません。若年者に多く20歳からすでにみられます。
20歳台 女性鼻全体と両側頬部に赤ら顔があります。
脂漏性皮膚炎といわれて他院で外用剤による治療を受けていましたが、ほうれい線の部分に紅斑がないことで脂漏性皮膚炎でないことがわかります。
混合タイプ
樹の枝状タイプ、丘疹タイプ、紅斑タイプがいりまじった状態です。
中年期以降から増加します。
毛細血管拡張症・あから顔の原因
毛細血管拡張の原因は5つに分けられます。
(Mitchel P Goldman and Richard G Benettの分類)。
- 先天的疾患:うまれつきの毛細血管の異常
- 主に膠原病から来る二次的なもの
- 皮膚病の部分症状
- ホルモン由来のもの
- 身体の損傷からくるものです
詳細は以下の表にお示しいたします。
毛細血管拡張症の成因(原因)
1)先天性 |
---|
血管性母斑 火焔状母斑 星彩状血管腫 先天性神経脈管病 運動失調性毛細血管拡張症 Sturge-Weber syndrome Maffucci’s syndrome Kippel-Trenaunay-Weber Syndrome 先天性多形皮膚萎縮型(Rothmud and Thomson syndrome) Bloom’s syndrome Cockayne’s syndrome 遺伝性出血性毛細血管拡張症(Rendu-Osler-Weber disease) 本態性進行性毛細血管拡張症 本態性全身性毛細血管拡張症 家族性(常染色体優性) 後天性(ホルモンあるいは感染による刺激) 両側性母斑様毛細血管拡張性症候群 瀰漫性新生児血管腫症 |
2)二次的皮膚付属器の後天性疾患 |
膠原病 紅斑性狼瘡(特に爪周囲) 皮膚筋炎 汎発性鞏皮症 (特に爪周囲、皮溝の石灰化、嚥下運動不良、肢端硬化症、毛細血管拡張症) その他 恒久性毛細血管拡張性斑点状発疹(肥胖細胞症) 癌性毛細血管拡張症(転移性嬢瘍) |
3)先行する皮膚疾患の部分症状 |
酒さ 静脈瘤 基底細胞癌 糖尿病性類脂肪性壊死 血管性多型皮膚萎縮症 毛細血管炎(血管拡張性紫斑) 色素性乾皮症 弾力繊維性仮性黄色腫 |
4)ホルモン |
妊娠 副腎皮質ホルモン由来 Cushing’s syndrome 医原性(全身性、局所性) 卵胞ホルモン(一般的には多量投与 |
5)身体的損傷 |
紫外線皮膚炎 放射線皮膚炎 凍傷および熱傷 手術後 特に緊張を伴う縫合部や外鼻形成部 外傷や感染 |
Mitchel P Goldman and Richard G Benettの分類を和訳
毛細血管拡張症・あから顔の治療
1)単純(線状)タイプ;simple(linear) type、2)樹の枝状タイプ;arborizing type、3)クモ状タイプ;spider type、4)丘疹タイプ;papular type、5)紅斑タイプ;erythematous typeのすべてが治療可能です。
とくに5)の紅斑タイプは若年の方にも多く、皮膚科では「原因のない赤ら顔」として放置され、治療をあきらめている方も多いのですが治療は可能です。
ほかに「ニキビのあとの赤ら顔」、中年以降にみられる「加齢による赤ら顔」も治療できます。
治療は色素レーザーであるⅤビームⅡがもっとも多く使われます。
1)色素レーザー:ⅤビームⅡ
波長595ナノメートルの色素レーザーが治療の第一選択となります。
当院ではシネロン・キャンデラ社のVビームⅡで治療を行います。
毛細血管拡張症のタイプにもよりますが、1カ月以上あけて1~6回の照射を行います。
血管の太さ(直径)、形状が均一なものほど照射回数は少なく、1~2回で消えることもあります。
混合タイプのようにいろいろな形状の血管が混ざっていると治療回数は多くなります。
毛細血管拡張症治療では麻酔は使用しません。
VビームⅡはレーザー照射時に内蔵されたダイナミッククーリングディバイス(DCD)という冷却装置が冷却ガスを吹き付けて、熱ダメージから皮膚を保護して疼痛を軽減します。
軽くゴムではじかれたような痛みがあります。
レーザーの特徴はVビームIIをご覧ください。
シネロン・キャンデラ社 VビームII 日本国内承認機器
治療例
40歳代 男性。30歳ころから両側頬部に赤ら顔が出てきて、次第に範囲が広がってきたので受診されました。樹の枝状タイプ、紅斑タイプがいりまじった混合タイプです。2カ月おきに4回の照射をおこない消失しました。
来院時
レーザー照射直後は炎症による赤みがでます。2日程度で炎症は消えました。
4回照射後です。毛細血管拡張はほぼすべて消失しました。。
治療にかかった費用:両側頬部で\68,040(\17,010×4回)(健康保険自己負担30%)
治療にかかった期間:1年2か月
治療のリスク:治療後5日レーザー照射部に発赤ができます。疼痛は1日程度。治療後2-3ヵ月炎症後の色素沈着が残ることがあります。
治療例
40歳代 女性。いつのころからか背部に線状の赤みがあって、気になっていました。単純(線状)タイプと樹の枝状タイプの混合タイプです。1回の照射でかなりの毛細血管拡張が消失しています。
来院時
1回照射後です。毛細血管拡張はほぼすべて消失しました。
治療にかかった費用:\32,010(健康保険自己負担30%), 治療期間:3ヵ月
治療のリスク:治療後2-3日レーザー照射部に発赤ができます。疼痛は1日程度。治療後2-3ヵ月炎症後の色素沈着が残ることがあります。
VビームⅡレーザー治療の流れ
1)受診
血管腫治療は健康保険適応ですので予約なしで受診ください。
予約診療はおこなっておりません。
診療ではレーザー治療の効果、ダウンタイム(顔が赤くなったり腫れる期間)、費用の説明をいたします。
当日の治療はおこないません。
2)レーザー照射のながれ
- 化粧を完全に落とします。
- VビームⅡにてレーザー照射をおこないます。
- 照射後にアイスパックで冷却して、炎症をとめるステロイド外用剤を塗布します。
またステロイド外用剤を処方します。治療後に痛みが予想される場合は鎮痛剤を処方します。
3)治療後のケア
- 当日やシャワー浴が可能ですが、熱いお湯や強く治療部位をこすることは避けてください。バスタブにつかって体が温まると、炎症がすすみヒリヒリ感が強くなります。
- 入浴はレーザー照射の翌日から可能です。
- 化粧がいつできるかは赤みの程度によりますが、だいた1~3日後からできます。
2)ロングパルスYAG(ヤグ)レーザー:ジェネシス
顔面の赤ら顔(毛細血管拡張の紅斑タイプ)治療に使います。
ジェネシスは1064nmという波長のロングパルスYAGレーザーを皮膚から離して中空照射します。
ジェネシスは皮膚深く浸透して真皮上層部を加熱し、コラーゲンの増生を促し、肌のキメ、ハリを改善させます。
ジェネシスは真皮上層部の微小脈管構造を加熱し、赤ら顔を改善します。
麻酔なしでも痛みが少なく、ダウンタイムがありません。
30分程度の時間を必要とします。
効果はVビームⅡに劣りますが、毛細血管治療でのVビームⅡが病変部のみ治療となりダウンタイムがあるのに対し、ジェネシスは顔全体に照射するので赤ら顔治療にプラスして肌質の改善作用があり、ダウンタイムがないのが特徴です。

キュテラ社 クールグライド/ジェネシス/ライムライト複合機
3)IPL:ライムライト
IPLとはIntense pulsed lightの略で、コンピューターで制御された強力な可視光線を照射して治療を行う光治療器です。
赤ら顔、シミ・ソバカス、肌のくすみを治療し、肌質をよくします。
軽い赤ら顔があって、治療のついでにシミ、ソバカス、肌のくすみ、化粧のノリをよくするといった使い方をします。
赤ら顔治療の効果としては、VビームⅡ ≫ ジェネシス+ライムライトとなります。
VビームⅡにより治療では赤く炎症を起こす“ダウンタイム”がありますが、IPLほとんどありません。

キュテラ社 ライムライトハンドピース
機種別治療効果比較
VビームⅡ | ジェネシス | ライムライト | |
---|---|---|---|
毛細血管拡張 | ★★★★★ | ★ | ★ |
赤ら顔 | ★★★★★ | ★ | ★ |
肌質改善 | ★ | ★★★ | ★★ |
毛穴の開き | ★ | ★★★ | ★★ |
シミ・ソバカス | 効果なし | 効果なし | ★★★ |
くすみ | 効果なし | ★ | ★★★ |
フェースリフト | 効果なし | ★★★ | ★ |
費用(税込)
VビームⅡ
費用VビームⅡによるレーザー治療は単純性血管腫・苺状血管腫・毛細血管拡張症に限り保険適応となります。
保険診療ではおよそ3ヵ月に1回の照射となります。
単純性血管腫・苺状血管腫・毛細血管拡張症※(保険診療)
面積(単位 ㎠) | 保険点数 | 自己負担額(30%) |
---|---|---|
10㎠未満 | 2,170点 | ¥6,510 |
10㎠以上20㎠未満 | 2,670点 | ¥8,010 |
20㎠以上30㎠未満 | 3,170点 | ¥9,510 |
30㎠以上40㎠未満 | 3,670点 | ¥11,010 |
40㎠以上50㎠未満 | 4,170点 | ¥12,510 |
50㎠以上60㎠未満 | 4,670点 | ¥14,010 |
60㎠以上70㎠未満 | 5,170点 | ¥15,510 |
70㎠以上80㎠未満 | 5,670点 | ¥17,010 |
80㎠以上90㎠未満 | 6,170点 | ¥18,510 |
90㎠以上100㎠未満 | 6,670点 | ¥20,010 |
100㎠以上110㎠未満 | 7,170点 | ¥21,510 |
110㎠以上120㎠未満 | 7,670点 | ¥23,010 |
120㎠以上130㎠未満 | 8,170点 | ¥24,510 |
130㎠以上140㎠未満 | 8,670点 | ¥26,010 |
140㎠以上150㎠未満 | 9,170点 | ¥27,510 |
150㎠以上160㎠未満 | 9,670点 | ¥29,010 |
160㎠以上170㎠未満 | 10,170点 | ¥30,510 |
170㎠以上 | 10,670点 | ¥32,010 |
保険点数算出方法) 照射面積が10平方センチメートルを超えた場合は、10平方センチメートル又は その端数を増すごとに所定点数に500点(自己負担分¥1,500)を加算します。ただし、8,500点(自己負担分¥25,500)の加算が限度となります。
※現在東京都では社会保険支払基金の指導で、広範囲の毛細血管拡張症に対するレーザー治療が保険でできなくなっています。
2019年11月に基金と交渉しました結果、基金の方針としては鼻、鼻周囲、鼻下、そのほかおよそ30平方センチメートル程度の毛細血管拡張症は保険での治療の適用となるとの見解でした。
当院ではこの方針にともない、広範囲の毛細結果拡張症の治療が保険でできなくなったので、Ⅴビームフェイシャルで治療をおこなっております。詳細はⅤビームフェイシャルのページをご覧ください。
※おおよその治療面積
例)鼻翼周囲と鼻翼・鼻下:10㎠以上20㎠未満
Vフェイシャル
VビームⅡを低出力で照射します。
赤ら顔、酒さ、酒さ様皮膚炎の治療に効果があります。
自費診療でおよそ1ヵ月に1回の照射をおこなっていきます。
部位 | 料金(税込み) |
全顔(初回お試し) | \13,200 |
全顔 | \16,500 |
目じり~あご先 | \13,200 |
両側頬部+鼻 | \11,000 |