1)ヘパリン類似物質製剤(ヒルドイド、ビーソフテンなど)の保湿剤を単独では処方しません。

  • 皮脂欠乏症などの異常な乾燥症状がまったくない状態で、ヘパリン類似物質製剤のみを処方することはありません。
  • ヘパリン類似物質製剤は診察なしでの処方はしません。アトピー性皮膚炎等の慢性疾患で、ステロイド外用剤等と併用されている患者様への対応も同様となります。

【理由】
① インターネット、SNS等でヘパリン類似物質製剤があたかも化粧品等と同様のものとして使用を推奨されていることを医療業界では問題視しています。ヘパリン類似物質製剤は皮脂欠乏症など“疾患”を治療する医薬品です。ヘパリン類似物質製剤の使用が美容目的で拡大していった場合、将来保険適用から除外される可能性があります。
② 医師は患者様一人ひとりの皮膚の状態を診察した結果を踏まえ、必要に応じてヘパリン類似物質製剤を処方しています。日本には四季があり、皮膚の乾燥症状は気候により変動します。患者様が自己判断で治療以外の目的(美容目的など)で使用することは、適切な効果が見込めないだけでなく、思わぬ副作用が発現するリスクがあります。

2)ニキビ治療薬を処方する際、薬剤使用による皮膚乾燥に対してヘパリン類似物質製剤(ヒルドイド、ビーソフテンなど)は処方しません。

  • ニキビ治療でベピオ、ディフェリン、デュアック、エピデュオを処方する際にヘパリン類似物質製剤を乾燥予防目的に処方することをやめます。

【理由】
① ベピオ、ディフェリン、デュアック、エピデュオはもとより皮膚乾燥を生じる薬剤です。これらの薬剤による皮膚乾燥は正常な反応です。皮膚乾燥が生じる場合は、ノンコメドジェニックテスト済の市販の化粧水や保湿剤を使用してください。
② ヘパリン類似物質製剤を化粧水や乳液代わりに顔全体に塗っていると、赤ら顔を誘発する恐れがあります。ヘパリン類似物質製剤の添付文書には副作用に皮膚刺激感(皮膚炎、そう痒、発赤、発疹、潮紅等)が明記されています。
③ ヘパリン類似物質製剤の適応症である皮脂欠乏症は、通常冬季に高齢者の胴体や下腿に見られやすい著しい乾燥状態のことを言い、脂漏が原因となるニキビのある顔面に用いることは、不適切な使用方法であると判断しました。