
目次
1.毛細血管拡張症とは
皮膚の真皮浅層(皮膚の表面に近いもの)の毛細血管が持続的に拡張し、皮膚表面から肉眼で確認できる状態をいいます。
紅斑と同様に皮膚の色が赤く変化しますが、毛細血管拡張症は炎症を伴いません。つまり、皮膚炎など皮膚の異常がない皮膚にもみられ、薬などでは改善しない症状であると言えます。
毛細血管拡張症は、その人固有の血管の形態であることや加齢による皮膚変化のほか、肝硬変や肝機能障害、妊娠などに伴う皮膚症状としてあらわれます。
治療は色素レーザーをつかいます。保険適用です。
関連項目 赤ら顔についてはこちらをご覧ください。
2.毛細血管拡張症の原因・要因となるもの
- 病気が起因とならないその人固有の血管の形態
- 酒さ
- 酒さ様皮膚炎
- ステロイド外用薬の長期使用
- 肝硬変や肝機能障害
- 妊娠
- 加齢
- 膠原病(全身性エリテマトーデスなど)
3.毛細血管拡張症の4つの分類(Redisch and Pelzerの分類)
毛細血管拡張症は血管形態に基づいて以下の4つに分類されます。
1)単純(線状)型
血管の太さや長さは様々で盛り上がりはなく、赤色や青紫色を示す枝分かれのない血管の拡張。鼻や頬部に多く見られます。

2)樹枝状型
血管の枝分かれを認める点を除き、単純(線状)型に類似します。身体のどこにでも生じますが、顔面ではエラのあたりに多く見られます。

3)クモ状型
中心の血管から周囲360度にわたりクモが足を広げたような血管を認めます。妊娠をきっかけに出現することがあります。また、肝硬変や肝機能障害に伴う皮膚症状として出現することがあります。女性ホルモンであるエストロゲンと関連があると言われています。当院に受診される患者様では、顔面や手の甲など皮膚が薄い部位、加齢や疾患などで薄くなった皮膚に多く見られる印象です。

4)丘疹型
皮膚の表面からわずかに隆起した小さい紅色丘疹状の血管拡張です。丘疹の周囲を取り囲むように毛細血管の拡張が確認できます。外観は老人性血管腫と似ていますが、ダーモスコピー検査により鑑別が可能です。

4.山手皮膚科クリニックの毛細血管拡張症治療
色素レーザー VビームⅡについて
色素レーザー『VビームⅡ』(シネロン・キャンデラ社)の光の波長は595nmであり、このレーザー光は血液中の赤血球に含まれる酸化ヘモグロビンに吸収されると熱エネルギーに変換されます。
この赤血球内で発熱した熱によりレーザー照射部位に存在する毛細血管が血管の内側から、熱破壊または熱損傷を受けて血管が閉塞することで、毛細血管拡張症を治療することができます。
治療のメカニズム
①色素レーザー『VビームⅡ』の波長595nmのレーザー光は、毛細血管内を流れる血液中の赤血球に含まれる酸化ヘモグロビンに吸収されます。
②吸収されたレーザー光は熱エネルギーへと変換されます。
③赤血球内に熱が発生します。
④赤血球内で発生した熱は周囲へ拡散します。
⑤発熱した赤血球から拡散した熱により毛細血管内壁を熱破壊または熱損傷されます。
このようなメカニズムで傷害された毛細血管は閉塞して、熱破壊された血管組織は、膠原線維の増殖とマクロファージによる貪食などにより正常組織におきかえられます。



治療できる深さと治療の限界
色素レーザー『VビームⅡ』によるレーザー治療を行っても、医師による治療、看護師施術に関わらずレーザー照射箇所の毛細血管拡張症を完全に消失させることができない場合があります。
レーザー光が届く深さには波長ごとに限界があるからです。
レーザー光の波長と皮膚への深達度(レーザー光が到達する皮膚表面からの深さ)は決まっています。
色素レーザー『VビームⅡ』の595nmという波長は、皮膚表面から1.5~1.7mmの深さまで届くとされています。
しかしながら、正常組織に過剰な損傷を与えずに治療ができる深さは皮膚表面から0.6mm~1mm程度までです。
出力(パワー)を上げてもこの深達度は変わりません。
治療効果がみられなくなってきたからといって、治療のたびに出力を上げていくことは効果が望めないだけでなく、正常組織を損傷する危険性が著しく高くなります。

5.山手皮膚科クリニックのレーザー治療へのこだわり
ていねいな視診で毛細血管拡張の状態を観察します
血管の直径とパルス幅
レーザーは様々な皮膚疾患の治療に使われています。毛細血管拡張、単純性血管腫などの血管病変、シミ、ホクロ、青・黒アザなどの色素性疾患などです。
レーザーを照射する時間をパルス幅といいます。
例としてサーチライトの光で物体を1回照らす時間がきっかり1秒間の時、パルス幅が1秒といいます。
レーザーではすごく短い時間レーザー波を物質に照射し、この単位は1000分の1秒(ミリ秒)、100万分の1秒(ナノ秒)の単位で表します。
色素性疾患の治療ではレーザーのパルス幅はレーザー機器の種類で決まっていて、治療する医師は出力のみの設定をおこないます。
弱いとシミは取れませんし、強いとシミが取れたあとの炎症後色素沈着が強く長くでます。
血管病変の治療では色素レーザーが使われます。
色素レーザーは治療の際にパルス幅と出力の2つの調整する必要があります。
これがとても難しいのです。どちらかが適正でないと治療の効果が出ないのです。
太い血管の場合は照射する時間が長く、細い血管の場合はパルス幅が短くなります。

血管の直径と熱緩和時間
毛細血管の直径がわかると、その血管にダメージを与えるのに有効なレーザー照射時間がわかっています。これを熱緩和時間といいます。
下の図は1981年にAndersonが提唱した表です。当院ではこの表を参考にレーザー照射のパスル幅を決定します。
パルス幅の決定はとても大事です。太い血管の治療をおこなうときに短いパルス幅で照射してもレーザーの熱は血管に伝わらず、血管壁にダメージがおきません。
一方、細い血管に長いパルス幅で照射した場合、レーザーから発生した熱は血管周囲の組織に拡散して熱傷を起こします。
例えば、血管の直径が100μmの場合、色素レーザーのパルス幅は4.8ミリ秒となります。実際のレーザー治療ではこれを基準にパルス幅を上下させて照射します。
| 血管の直径 | 熱緩和時間(Thermal Relaxation Time; TRT) |
| 10マイクロメートル(μm) | 0.048ミリ秒(msec) |
| 20マイクロメートル(μm) | 0.19ミリ秒(msec) |
| 50マイクロメートル(μm) | 1.2ミリ秒(msec) |
| 100マイクロメートル(μm) | 4.8ミリ秒(msec) |
| 200マイクロメートル(μm) | 19.0ミリ秒(msec) |
| 300マイクロメートル(μm) | 42.6ミリ秒(msec) |
Microvasculature Can Be Selectively Damaged Using Dye Lasers: A Basic Theory and Experimental Evidence in Human Skin
R. Rox Anderson BS, John A. Parrish MD Lasers in Suery and Mdeicine 263-276 (1981) より
ダーモカメラ
パルス幅の設定をおこなうには、治療したい毛細血管の直径を知りたいところです。当院ではカシオのダーモカメラDZ-D100を使います。

初診あるいは初回のレーザー治療の前にダーモカメラを用いて、血管の状況を確認します。

血管の直径の測定
ダーモカメラで撮影した写真をその場で計測することができます。どのくらいの直径だといくらのパルス幅と決まっています。

ソフトでの血管の直径の解析
また、カシオのダーモカメラDZ-D100の付属ソフトを使って、正確な直径を解析することもあります。

Vビームの出力の設定
どのパルス幅をつかうかを決定しました。今度は出力の設定です。
これは、レーザー治療の経験がものを言います。当院ではかなり早い時期からVビームⅡを導入して、院内で適正は出力設定を決めています。
安全な照射
拡張した毛細血管の直径がどのくらいかを映像で客観的に評価し、適正なパルス幅と出力設定をおこないます。
これにより熱傷やそれに続く瘢痕形成を防ぎながら、効果のある治療をこころがけています。
美白剤による前処置
色素レーザーはメラニンにも吸収される
毛細血管拡張の治療に使い色素レーザーの波長595nmのレーザーは毛細血管の中の赤血球の成分である酸化へモグロビンに吸収され発熱します。
その熱は血管壁にまで及び拡張した毛細血管を破壊します。
波長595nmの色素レーザーはメラニンにも吸収されます。
下の図は皮膚疾患の治療に使用されるレーザーと物質(メラニン、酸化ヘモグロビン、水)への吸収の度合いを示します。
レーザーの波長の縦線と物質(メラニン、酸化ヘモグロビン、水)をあらわす横線が高いところで交わるほど、レーザーは物質に吸収されやすいといえます。
波長595nmの色素レーザーは表示されているレーザーの中でもっとも高い位置で酸化ヘモグロビンの赤い線と交わります。
これが、色素レーザーが血管病変の治療に使われる理由です。
同時に波長595nmの色素レーザーはメラニンの茶色の線とも高い位置で交わっています。
色素レーザーはメラニンにも吸収されやすいことを示します。

くすんだ皮膚では色素レーザーは効かない
色素レーザーはメラニンに吸収されます。レーザーを照射するとくすみがない皮膚でもレーザー波は表皮のメラニンに反応します。
レーザー波は真皮に届くまでにわずかに減弱します。そして拡張した毛細血管拡張の中の赤血球に吸収された後に熱に変換され血管壁を破壊します。

くすんだ皮膚では表皮メラノサイトが活発にメラニンを産生しています。
この状況でレーザーを照射すると、レーザー波のかなりの量が、表皮のメラニンに吸収されて熱に変換されます。
真皮に届くレーザーは減衰してしまい、真皮に存在する拡張した毛細血管を破壊する効果が弱くなってしまいます。
色素レーザーを何回も照射しているのに、いっこうに赤い顔がよくならない時、くすでいる皮膚にそのまま色素レーザーを照射している可能性があります。
皮膚の色が部分的に薄くなる危険性がある
皮膚がくすんだ状態で色素レーザーを使うことは、別の危険性をもっています。
表皮メラノサイト(色素細胞)は活発にメラニンを産生していて、メラノサイト自身にもたくさんのメラニンを抱えています。
毛細血管拡張の治療のために照射した色素レーザーはこのメラニンに反応して表皮メラノサイトを徐々にですが破壊していきます。
ルビー、アレキサンドライトレーザーほど破壊力が強くないので、いきない白抜けがでることはありませんが、治療を重ねるうちにゆっくり肌の褐色の色調がうすくなっていきます。
毛細血管拡張がよくならずに肌の褐色調が薄くなると、よけに赤みがめだつ可能性があります。
のちのち治療部位がほかの顔の色調より薄くなってしまいます。よくないことに、褐色調が薄くなった状態は回復する可能性が低いです。
このために、当院では治療前の1か月、美白剤の前処置をおこなうことが多いです。
6.毛細血管拡張症の診察・治療のながれ
● 治療までに2回のご来院が必要です。当院は方針として、全てのレーザー治療、美容施術において初診での来院時に治療をおこなうことはありません。改めてご来院いただくこととしております。
● 過去に当院にて初診・初回相談または治療をお受けになられたことがある患者様において、初診または最終治療のいずれか直近の日付から1年を経過している場合、再度初診の診察から治療開始または治療再開となります。
WEB予約
診察はすべてWEBからご予約をお取りいただく完全予約制です。クリニック受付ならびにお電話では予約の受付はいたしておりません。
初診・初回相談(来院1回目)・再相談
- 毛細血管拡張症のレーザー治療をご希望の方は、先ず診察にご来院いただいております。診察時に診断と治療方法の説明をおこないます。
- 前回相談日ならびに前回レーザー治療から1年以上経過している方は、再度診察(再相談)が必要です。
- 当院は方針として、診察と治療は同時におこなっておりません。レーザー治療までに2回のご来院が必要です。
- 必要時、診察前に洗顔または部分的な洗浄をお願いしております。範囲が狭い場合は、診察室でお化粧を拭き取らせて頂くことがあります。
- 当院では、個包装のメイク落とし、洗顔料、化粧水、乳液、日焼け止め、使い捨てタオルとヘアバンドをご用意しております。診察後にお化粧直しをご希望の場合は、患者様ご自身にてご用意願います。
- 診察・診断をおこない、医師が毛細血管拡張症の治療について説明いたします。
- 治療希望部位の面積を計測し、おおよその治療面積をお伝えいたします。※実際の治療面積は、治療時に確定します。
- レーザー治療を前提とした診察・相談・治療の実施について、患者様の年齢制限を設けております。ご相談及び施術ともに、満19歳以上の方を対象とさせていただきます。
治療(来院2回目)
小範囲の場合
- 初診・初回相談・再相談の後に治療が可能となります。
- 以下のイラストと表は、小範囲の毛細血管拡張症がよくみられる部位と治療面積の目安です。

広範囲の場合
- 治療希望範囲が広範囲の場合、Vフェイシャル(VビームⅡを使用)をおこなっています。施術は看護師がおこないます。
- 以下のイラストはVフェイシャルの施術範囲です。

7.費用
毛細血管拡張症の費用に関してはこちらをご覧ください。
Vフェイシャルの費用に関してはこちらをご覧ください。
8.執筆者

この記事の執筆者
豊福 一朋医師
公益社団法人日本皮膚科学会認定
皮膚科専門医/医学博士/経営管理学修士(MBA)
メッセージ
テキストが入ります…(省略)
経歴
- 1991年
長崎大学医学部卒業
-
長崎大学病院泌尿器科、九州大学病院皮膚科にて卒後研修
- 1994年
九州大学大学院医学研究科入学。
同年、カナダ医学奨学金(Royal Canadian Medical Foundation)にてカナダ・アルバータ州立大学皮膚科(エドモントン)に留学 - 1997年
九州中央病院皮膚科医長
- 1998年
九州大学大学院医学研究科修了(医学博士)
- 1999年
米国国立衛生研究所(NIH)(メリーランド州ベセスダ)研究員
- 2001年
佐賀県立病院皮膚科医長
- 2002年〜2004年
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)
- 2005年
山手皮膚科クリニックを開設
VビームⅡの概要
| 診療区分 | 自由診療 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 照射出力等 | 21~30J/c㎡ | ||||||||||||
| 治療期間及び回数 | 効果判定まで3回 1か月間隔 | ||||||||||||
| 施術によるリスク・副作⽤ | レーザー照射時にゴムで弾くような痛みがあります。 治療直後にはレーザー照射部位に発赤と痛みがでます。 |
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| 施術に要する費⽤ |
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| 承認区分 | VビームⅡは国内承認機器です。 |
注)治療には、国内未承認医薬品または医療機器を用いた施術が含まれます。
治療に用いる医薬品および機器は当院の医師の判断の元、個人輸入の続きをおこなったものです。
個人輸入において注意すべき医薬品等についてはこちらをご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1.html